聞き手/藤井 省吾(日経BP 総合研究所副所長)

消費者と接点を持つメーカーとして、商品を通じた環境・健康への貢献に力を注ぐ。包装材の紙への転換、豆腐由来の代替肉の開発など独自の取り組みを進める。

2021年1月、社名を日本製粉からニップンに変更しました。思いを聞かせてください。

前鶴 俊哉(まえづる・としや)
前鶴 俊哉(まえづる・としや)
ニップン 代表取締役社長
1983年東京大学農学部卒業後、日本製粉(現ニップン)入社。2014年執行役員生産・技術部長、15年取締役執行役員生産・技術副本部長兼生産・技術部長、17年取締役常務執行役員生産・技術本部長兼生産・技術部長、20年4月取締役専務執行役員生産・技術本部長、6月より現職(写真:村田 和聡)

前鶴 俊哉 氏(以下、敬称略) 当社は1896年の創立ですが、70年代に起業した複数の製粉会社をルーツとしています。戦禍や災害を乗り越えて食をめぐる環境変化に対応し、小麦粉の様々な用途を開拓しながら150年近く製粉事業を営んできました。製粉は当社にとって重要な価値ある事業であり、今後もさらなる発展に努めます。

 人口減少が進む中、企業として成長を図るには、時代と社会の変化に対応しながら多角化を進めていかなければなりません。これまでも1950年代に製粉の周辺事業であるパスタ事業やプレミックス事業に乗り出し、70年代には冷凍食品事業、90年代には中食事業に参入しました。これらの事業は着実に成長を遂げています。

 今後はM&Aなどを実施しながら海外でも加工事業を成長させ、食品会社としての飛躍を図りたい。第2の創業という思いで、120余年慣れ親しんだ歴史ある社名をニップンへと変更しました。

ESGにはどのように取り組んでいますか。

前鶴 ESGやSDGsに関わる分野は非常に幅広く、どれも重要です。それぞれが抱える課題を着実に解決し、成果が上がるようマネージしていくことが重要です。

 環境に関しては、これまでもコストダウンにもつながる省エネや省資源に力を注いできました。90年代に「ISO14001」の認証取得に取り組み始め、現在は認証範囲を全社に拡大しています。

 社会については、食の安心・安全や商品の安定供給に力を尽くしつつ、食育活動や地域社会への貢献、国際的なボランティア活動への協力などを行っています。その1つとして、入院中の子供を看病する家族のための滞在施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス」に協賛しています。私の孫が入院した際に親族が利用し、非常に有意義な社会貢献活動であることを実感しました。今後も冷凍食品の提供など、一層の協力をしていくつもりです。

 当社は東京証券取引所のプライム市場での上場維持を目指しています。ガバナンスに関しても、時代とともに刻々と変わる基準に着実に対応していきます。

 このようにESGは様々な取り組みを平行して進めなくてはなりません。その中でも私は、特に商品づくりに重点を置き、環境や社会に貢献できる商品を生み出したいと考えています。これは消費者と接点を持つメーカーだからこそできることであり、優先的に取り組みます。お取引先であるスーパーやコンビニエンスストアからのニーズも高まっています。

環境への影響を把握し負荷軽減

環境面の取り組みとして、原料調達、製造、出荷など事業プロセスの環境負荷を把握し、「マテリアルバランス」として公表しています。その狙いを教えてください。

前鶴 当社の主な原材料は農産物で、そもそも“大地の恵み”をもとに事業活動を行っています。その責任として、原材料から製造、物流、お客様の下での製品使用・廃棄に至るまで、インプットとアウトプットを数値化し、自然環境への影響を把握して負荷軽減に努めるべきだと考えています。