聞き手/安達 功(日経BP 総合研究所フェロー)

企業の脱炭素化を推進するには、国内の延べ床面積の大半を占める既存ビルの改修が鍵となる。省エネ・創エネの知見を生かしたZEB化を通じて、2050年カーボンニュートラルに貢献する。

2020年11月にリニューアル本部を新設しました。その狙いは何でしょう。

植松 徹(うえまつ・とおる)
植松 徹(うえまつ・とおる)
大成建設 執行役員 リニューアル本部長
1959年生まれ、静岡県出身。83年大成建設入社、2018年建築本部建築部理事、19年理事 建築本部建築部リニューアル室長、20年理事 リニューアル本部長(現任)、21年より現職(写真:高田 浩行)

植松 徹 氏(以下、敬称略) 組織改編の狙いは建物におけるリニューアル事業の強化と受注拡大です。当社グループは、20年5月に中期経営計画と「TAISEI VISION 2030」を策定しました。国内建築事業の戦略の柱として、リニューアル分野の拡大を打ち出しています。

 既存建物のリニューアル工事は、これまで全国約100カ所の作業所が顧客の要望に応じて個別に受注し、工事を進めてきました。改組ではリニューアル本部を新設すると同時に、全国12支店にリニューアル室を設置することで組織を一元化しました。

 数年がかりのプロジェクトになる新築と違い、リニューアル工事は受注から竣工までが短期間です。リニューアル本部は技術部門と営業部門の一部が一体化し、顧客の様々な要望に素早く対応します。本社や各支店にリニューアル専門のスタッフを置き、全国で提案型の営業が確実に展開できるようにしました。

ビルのリニューアルとカーボンニュートラルの関係を教えてください。

植松 20年10月に政府が「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、グリーン成長戦略を打ち出しました。翌年には地球温暖化対策推進本部が、30年度の温室効果ガスを13年度比で46%削減する目標を発表しました。

 企業がカーボンニュートラルを推進するためには、オフィスビルなどの脱炭素化が欠かせません。当社はこれまでも新築建物を省エネルギー、創エネルギーで年間エネルギー収支をゼロにする「ゼロ・エネルギー・ビル」(ZEB)や、省エネ化50%以上のZEBreadyを進めてきました。

 しかし、延べ床面積で見ると、毎年建設される新築建物は1%に過ぎず、99%を占める既存建物をZEB化する「リニューアルZEB」が必須です。これまで蓄積してきたZEB化技術や施工技術を向上させて、カーボンニュートラル実現に貢献することがリニューアル本部の使命です。

自社ビルをリニューアルZEB

どうやってリニューアルZEBを進めていきますか。

植松 都心部の中高層ビルでは太陽光発電パネルの設置スペースが限られるなどZEB化に向けた課題がありました。

 建設会社としては、まず実践してみせることが重要と考え、22年度から当社グループが保有する関西支店ビル、横浜支店ビル、大成ユーレック川越工場の3カ所でリニューアルZEBを実施することにしました。顧客の参考にしてもらうとともに、ZEB化技術と施工技術の向上を図ります。

■リニューアルZEB 「3プロジェクトのコンセプト」
■リニューアルZEB 「3プロジェクトのコンセプト」
出所:大成建設
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