「社外取締役3分の1基準」に

コーポレートガバナンスを考える上で、社外取締役を3分の1以上にすることは重要なポイントですね。

成川 ガバナンス不全を起因とした不祥事が発生している状況を踏まえて、取締役会の監督機能を強化すべきと考え、「社外取締役3分の1基準」に改定しました。

 3分の1という数字には様々な根拠があります。たとえば、指名委員会などの委員会を3つ作ると社外取締役は重責を担う観点で2人では少なく3人必要になる。日本の上場企業の取締役の平均人数は約9人ですから、比率は3分の1です。社外取締役の人材プールが少ない現状では、まずは3分の1にする。

多様性の効果は表れていますか。

成川 取締役会の実効性評価については、以前より取締役会での意見内容が濃くなった、社外の意見も有益という声が多く聞かれます。M&Aの意思決定で社外取締役の意見をどのように反映させたかを聞いてみると、推し進めようとする社長を止めたり、逆に社外取締役が後押しをしたりと、社内の取締役だけではできない議論がされているようです。

 社外取締役の役目は監視や経営助言ですから、攻めにも守りにも、彼らの意見を積極的に取り入れた方がいいでしょう。

事業戦略と一体でCSを推進

役職員の心構えとして定めている「CS(お客さま満足)取組方針」の内容について教えてください。

「投資家対話の約4割はESG関連」<span class="fontSizeS">(写真:村田 和聡)</span>
「投資家対話の約4割はESG関連」(写真:村田 和聡)

成川 「CS取組方針」とは、お客様からの評価向上のために何をなすべきかを、常に全役職員が考え、実践するというものです。「お客様の声」から得られた課題を分析し、より満足していただけるよう、商品・サービスの改善と開発、提供に取り組んでいます。

 信託という業務はお客様の信頼、期待、満足がなければ成り立たないビジネスですから、最も重要な経営課題と位置づけ、事業戦略と一体で推進しています。

 私は、最近の若い人たちは生きがいや楽しみを大切にして、人の役に立ちたいという気持ちが強いと感じています。社会課題解決に関心があり、そこに付加価値を見いだしている。利益は増えたけれど何に貢献したのかが見えないとなると、若い人たちの従業員満足度は半減してしまう。信託というビジネスでは、CSはとても重要なテーマです。

TCFDでは、企業や投資家に「機会」と「リスク」を認識し情報開示するよう求めています。

成川 15年のパリ協定で合意された「2℃シナリオ(気温上昇を産業革命前と比べて2℃未満に抑制する)」の達成にはどうすべきかについては、検討しているところです。「2℃シナリオ」を達成できそうにない企業には、どのような手立てを打つべきか、リスクは何か、それらを開示するよう働きかけています。また、当社の持っているポートフォリオの状態も開示しています。

 19年5月、アセットマネージャーとしてTCFDに賛同しました。TCFDの提唱する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つについては、今後も検討と開示を進めていく方針です。

菅首相の所信表明で「50年までに温室効果ガス実質ゼロ」が一挙に盛り上がってきました。

成川 50年にカーボンニュートラルを実現するには、エネルギー政策をどうするかという問題があります。ただ、それは国の政策であって、我々企業は「2℃シナリオ」達成を目指す。国と企業が両輪となって、グリーン社会の実現に注力していかなければならないと思っています。