聞き手/安原 ゆかり(日経BP 総合研究所上席研究員)

ゆうちょ銀行は2025年度が最終年度の中期経営計画で、ESG経営を前面に打ち出した。全国を網羅する金融ネットワークを活用してデジタル化を推進し、地域活性化への貢献を担う。

2021年5月に企業価値の向上とESG経営をミッションに掲げた中期経営計画を発表しました。

矢野 晴巳(やの・はるみ)
矢野 晴巳(やの・はるみ)
ゆうちょ銀行 専務執行役
1984年東京大学法学部卒、日本興業銀行入行。みずほコーポレート銀行管理部室長、みずほ証券総合企画部経営調査室長を経て2010年経営調査部長。11年ゆうちょ銀行コーポレートスタッフ部門調査部長、執行役、常務執行役を経て19年から現職(写真:吉澤 咲子)

矢野 晴巳 氏(以下、敬称略) ゆうちょ銀行は07年10月から民間銀行として歩み始めました。その強みは民営化以前から郵便局を通じて全国あまねく行き渡った「社会的インフラ」とも呼べるネットワーク基盤です。通常貯金の口座数は約1億2000万口座あり、日本の人口とほぼ同じです。全国隅々まで約2万4000の郵便局ネットワーク網があります。これは他の銀行店舗数の総計より約1万店も多い数字です。また全国で約3万1900台のATMを配置しており、そのATMを利用可能な提携金融機関も約1300社に上ります。

 SDGs(持続可能な開発目標)は30年の目標達成に向け「誰一人取り残さない」という理念を掲げています。ゆうちょ銀行も全国規模のネットワーク基盤を持つ事業者として、4つのマテリアリティ(重点課題)を設定し、その第一として「日本全国あまねく誰にでも『安全・安心』な金融サービスの提供」を掲げました。SDGsの掲げる理念との親和性は高いと考えます。

 特に、本年度から始めた25年度が最終年度の中期経営計画では、「デジタルサービスの拡充・普及」が最重要テーマです。スマートフォンなどを通じて受けられる金融サービスを安心・安全を最優先に、より利用しやすくするとともに、リアルとデジタルの相互補完を通じて全てのお客さまへのデジタル金融サービスの普及を目指します。お客さまには必ずしもデジタル操作に得意でない方もいますので、全国にある店舗で使い方をサポートします。

具体的なKPI(重要業績評価指標)は何ですか。

矢野 通帳アプリの登録口座数については、約280万口座から25年度には1000万口座を目指します。通帳アプリはデジタルサービスの入り口と位置づけており、ネット通販など新たなチャネルと連携した共創プラットフォームの構築を目指します。将来的には日本郵政グループの外にいる事業者ともパートナーシップを結び、お客さまの体験価値を高める特徴あるコンテンツを付加することも考えています。

 「デジタルとリアルの相互補完」を通じて、資産を増やしたいお客さまはサービスをデジタルと店舗の両方から選択できます。

 ゆうちょ銀行で初めて投資信託を買う人も多いので、「つみたてNISA」の口座数を約13万口座から25年度に40万口座まで高めるKPIを掲げました。リアルではお客さまに寄り添ったコンサルティングを推進し、デジタルでは多様な投資信託をフルラインで提供したいと考えています。