聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

長期ビジョン「Vision 2030」ではグループの持続的な成長とサステナブルな社会への好循環を目指す。ESG経営を中心においた革新と創造で、社会課題解決への貢献を拡大していく。

2020年5月に長期ビジョン「Vision 2030」を策定しました。ビジョンステートメントに「Innovationfor the Earth」を掲げています。どのような思いを込めたのでしょうか。

加藤 敬太(かとう・けいた)
加藤 敬太(かとう・けいた)
積水化学工業 代表取締役社長
1958年生まれ、大阪府出身。80年、京都大学工学部卒業後、積水化学工業入社。2008年執行役員 高機能プラスチックスカンパニー 中間膜事業部長、19年4月代表取締役専務執行役員 ESG経営推進部担当、経営戦略部長。20年3月より現職(写真:川田 雅宏)

加藤 敬太 氏(以下、敬称略) 長期ビジョンの核は、持続的成長を遂げていくことです。その根幹にあるのが、「Innovation forthe Earth」です。社会課題解決に貢献できる製品と事業を拡大して、社会の持続性と事業の持続性を両立させたいとの思いを込めています。レジデンシャル(住まい)、アドバンストライフライン(社会インフラ)、イノベーティブモビリティ(エレキ・移動体)、ライフサイエンス(健康・医療)の4つの事業ドメインで、LIFE(人生)の基盤を支え、「未来につづく安心」を創造していきます。

「イノベーションを進めるには挑戦する文化が必要」とのことですが、そういった姿勢を育てるために大切にしていることはありますか。

加藤 長期ビジョン策定の前提として、今後10年をどう見るかについて議論しました。結論は不透明だということが分かりました。かつては年率何%成長という形でビジョンを打ち出していました。しかし、今は先が読めない時代になっています。感染症、自然災害の激甚化、保護主義の台頭、米中対立など、様々な不確実性を想定していましたが、実際に長期ビジョンがスタートした20年度には新型コロナウイルスの感染拡大が起きてしまいました。こうした中、持続的成長を考える上で、「健全な危機感を持って、変わり続けることを恐れない」という認識を打ち出しました。挑戦につながるメッセージです。

■ ESG経営の概念図
■ ESG経営の概念図
グループの持続的な成長とサステナブルな社会実現の好循環を作り出す積水化学工業のESG経営
(出所: 積水化学工業)
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危機感の背景にはどんなことがあるのでしょうか。

加藤 以前、ある事業部の製品を調べたところ、10年前に販売していた製品が今は半分もないことが分かりました。漫然と事業を続けているだけでは事業そのものが衰退していくのです。

 挑戦に当たっては、失敗してもとがめません。従来のやり方にとらわれずに挑戦し続けると、失敗も出てきます。「挑戦の結果としての失敗は責めない」と伝え続けていて、人事制度にも反映させています。

 従来の人事制度では昇進に当たって在職年数が勘案されましたが、22年4月に本格開始の新制度では考慮しません。適材適所から適所適材への配置にして、抜擢も含めて可能にしました。