聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

2030年の目指すべき姿「2030Vision」をステークホルダーを巻き込み、1年かけて作り上げた。「貯蓄からSDGsへ」をキーワードに、創業以来の証券会社のビジネスモデルを変えていく。

2030年に目指すべき姿を示した「2030Vision」策定には時間をかけて様々なプロセスを踏んだと聞きました。

中田 誠司(なかた・せいじ)
中田 誠司(なかた・せいじ)
大和証券グループ本社 代表執行役社長CEO
1960年生まれ、東京都出身。83年早稲田大学政治経済学部卒業後、大和証券入社。2007年大和証券グループ本社執行役、16年大和証券グループ本社取締役兼代表執行役副社長、最高執行責任者(COO)、17年大和証券グループ本社取締役兼代表執行役社長、最高経営責任者(CEO)に就任(写真: 川田 雅宏)

中田 誠司 氏(以下、敬称略) 21年5月に2030Visionとグループ中期経営計画「“Passion forthe Best” 2023」を発表しました。既に18年に策定した前中期経営計画で、経営戦略の根底にSDGsを据えることを決めています。

 SDGsは15年9月の国連総会で正式に採択されましたが、今ほど一般に認知されておらず、トップダウンでSDGsの目標達成に注力すると打ち出しても、社員が自分ごととして取り組めないだろうと思いました。

 そこで外部有識者にも参加してもらうSDGs推進委員会で、ボトムアップの推進を検討しました。現状からどのような改善ができるかを積み上げていくフォアキャスティングの視点で、社員からSDGsに関する取り組みやビジネスのアイデアを募集したところ、4200件以上の案が集まりました。

 同時に当社の在るべき姿の実現に向けてバックキャスティングの視点で提言してくれる社員を募ったところ、約120人が参加してくれました。

 2030Visionは1年程かけて、グループ横断で海外拠点の役員や若手社員、そして社外取締役を含めた有識者からも意見を募って、在るべき姿やマテリアリティ(重要課題)を特定しました。会社の指針を明文化することで、一人ひとりが取るべきアクションの基盤ができました。

■ 「2030Vision」の策定プロセス
■ 「2030Vision」の策定プロセス
約1年をかけ、社内外のステークホルダーと、「当社の目指すべき姿」について議論を実施
(出所: 大和証券グループ本社)

若い世代のアイデアを取り込む

全員参加型のプロセスではいろいろな意見が出たでしょうね。

中田 2000年代初頭に社会人になったミレニアル世代以降の若い人たちは、私たち世代とは感覚が違うと感じます。例えば、私が若い頃はコンビニエンスストアに置かれたゴミ箱は1つだけでした。ところが若い世代にコンビニのゴミ箱の数を質問すると3つと答えます。生活習慣にゴミを分別する行動やSDGs的な考え方が組み込まれているのです。

 ですから、SDGsの考え方を身に付けて育った若い世代のアイデアをもっと取り込む必要があると考えています。とはいえ、ビジョン策定で経営の方向性を判断するのは私たちの世代ですから、集まったアイデアをしっかりと選別していく必要があります。ただ、柔軟性を持ってアイデアを取り入れていこうと意識しています。