聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

医療機器から調剤薬局まで医療・保健・福祉・介護事業などを国内外で、展開する。「生命を守る人の環境づくり」をグループミッションに掲げて、全56社のグループ企業を率いる。

創立からエンジニアリング的発想で事業を展開していますが、そこに有望性を見いだしたきっかけは何ですか。

古川 國久(ふるかわ・くにひさ)
シップヘルスケアホールディングス 代表取締役会長CEO
1945年岡山県生まれ。64年西本産業(現キヤノンライフケアソリューションズ)入社。92年シップコーポレーション(現シップヘルスケアホールディングス)設立、代表取締役社長就任。2009年持ち株体制に移行、14年より現職(写真:太田未来子)

古川 國久 氏(以下、敬称略) かつて勤めていた企業はレントゲンフィルムや病院向け什器(じゅうき)・備品の販売、施工などを請け負う商社でしたが、当時の納入先の医療施設は、ジメジメした現像室や、床にケーブルが這(は)っている集中治療室という状況でした。小さい頃から、物事を興味深く観察する癖があり、こうした医療現場を見渡す中でビジネスの可能性を見いだしたのです。病院の設計から医療機器の納入まで丸ごと請け負ってはどうかと考え、それが医療機関の開設や増改築を一括プロデュースする「トータルパックプロデュース」につながっています。

1972年、有馬温泉病院(兵庫県)の開設支援が皮切りですね。

古川 約7000のクリニックと700ほどの病院から受注実績があります。経営承継の課題などの相談を受ける中で、医療系コンサルティング事業もスタートさせました。

理念の浸透を図り持株会社に

2009年に、現在の持ち株会社制に移行しました。

古川 いろいろ事業に手を広げるうちに、組織が急速に拡大したので、財務体制の集約とともに、創業以来掲げてきた理念「SHIP」を社名に冠して、あらためて理念の共有と浸透を図ろうと考えました。

「SHIP」の根源である「至誠惻怛(しせいそくだつ)」は、私の幼い頃に生母から「方谷さんのようになれ」と言われてきた陽明学者・山田方谷(ほうこく)の言葉で、「真心といたみ悲しむ心があれば、物事が正しく運ぶ。それが人としての生き方」という意味です。当社の「SHIP」や「至誠惻怛」は、今日のSDGsやESGに通じるような理念であり、いち早く地球環境にも配慮した社会的に責任ある事業活動を実践してきたのだと考えています。

グループ企業56社が一体感を持って取り組むのは大変ですか。

古川 グループ企業の多くが合併・買収によるものですが、ここで重要なのは互いへの信頼です。私はパートナー企業の風土も歴史も尊重したいと考えていますから社名の変更を求めたりしません。代わりに「SHIP」「至誠惻怛」という基本姿勢の理解と共有は必ずお願いしています。年に2回、社長会を開催していますが、良い関係を構築できていると思います。

20年12月には大阪ソリューションセンターを竣工するなど、事業の高度化、高付加価値化を進めていますね。

古川 RFID(無線自動認識)の活用で全ての医療消耗品をほぼ無人でリアルタイムで管理するなど医療物流拠点としては国内最先端の施設と自負しています。当社が15年前から着目していた重粒子線によるがん治療については、全国で6番目、民営施設としては国内初となる大阪重粒子線センターを建設。開設から1000人以上のがん患者の治療に関わるなど運営にも携わっています。