聞き手/藤井 省吾(日経BP 総合研究所副所長)

社会環境の変化などに応じ、2018年度に特定したマテリアリティの見直しを敢行した。業界トップクラスの成果を目標に、50年に向けた環境ビジョンを実行に移す。

2018年度からマテリアリティ(重要課題)を特定してサステナビリティ経営に取り組まれてきました。21年度にその一部を見直されましたが、その意図から教えてください。

相良 暁(さがら・ぎょう)
相良 暁(さがら・ぎょう)
小野薬品工業 代表取締役社長
1958年大阪府生まれ。83年小野薬品工業入社。2006年取締役、07年常務取締役、08年2月取締役副社長、同年9月より現職。(写真:太田 未来子)

相良 暁 氏(以下、敬称略) 外部環境の変化や社内での出来事などを踏まえて、4項目の重要度を上げました。第1の「法令順守とコンプライアンスの徹底」は、21年の三重大学医学部奨学寄付金に関する社員の不祥事をきっかけに企業としての在り方を見直す機会を得て、ステークホルダーと当社の両者で最も重要度の高い課題と位置付けました。第2の「コーポレートガバナンスの向上」は、ステークホルダーの求めるところと我々の現状にまだまだ乖離(かいり)があると思われ、その解消のために、取締役会の運営や役員人事の決定に、さらに社外取締役の関与の度合いを高めていきたいということです。

 第3の「医療アクセスの改善」については、取り組みの1つに当社独自の「ONO SWITCHプロジェクト」があり、働き方改革を通して世界に貢献する活動を推進しています。具体的には、残業をできるだけ減らし、そこで得られた原資を社員に還元するとともに、カンボジアの看護師育成支援などに寄付しています。

 第4の「人権の尊重」は当たり前のことでもありますが、18年に改めて「人権グローバルポリシー」を策定し、さらに積極的な貢献を示すために重要度を上げました。

SDGsについても、21年の「第3回日経SDGs経営調査」で4つ星になるなど、優れた取り組みをされています。中でも「革新的な医薬品の創製」にひも付く活動として、SDGs3、9、17を掲げています。

相良 「革新的な医薬品の創製」は我々の存在意義そのものです。医薬品を提供することで、患者さんやそのご家族の健康や希望、そして幸せにつなげていくという思いで事業に取り組んでいます。9の「産業と技術革新の基盤をつくろう」は当社が目指しているイノベーションであり、本業の中で社会貢献できるところです。

 17の「パートナーシップで目標を達成しよう」は、まさに我々の生命線ともいえる研究開発のオープンイノベーションです。当社は1961年に国民皆保険がスタートした際、大衆薬から医療用医薬品へのシフトに出遅れ、倒産の危機に直面したことがあります。それを脱すべく、世界トップクラスの研究者たちと共同開発を進め、「プロスタグランジン」の全化学合成を企業として世界で初めて成功させました。これが小野薬品のオープンイノベーションの最初で、近年の「オプジーボ」の開発にもつながります。現在も200件ほどの共同研究が行われており、最近は海外の研究者との共同研究が3割を占めるまでに増えてきています。

 2021年12月には当社の寄付により京都大学内に「小野薬品・本庶 記念研究基金」を設立しました。このような産学連携の新しい形も推進します。