いち早くデジタル化を推進

デジタルトランスフォーメーション(DX)推進にも積極的です。21年8月にはDX戦略を策定しましたが、その背景を教えてください。

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「DXで日本の医療を支える」(写真: 吉澤 咲子)

三津原 超高齢社会によりヘルスケア関連の人材不足が予想される25年問題など、多くの医療課題が目前に迫っています。今後は国による様々な制度改革が想定され、医療分野の企業には、その変革の波を乗り越える力が求められます。当社ではそうした環境の変化を成長の機会と捉え、いち早く準備を進めてきました。その1つが、業界に先駆けた情報通信技術(ICT)対応です。調剤業務を支える基幹システムである「調剤システム」をはじめ、オンライン服薬指導システム「日本調剤オンライン薬局サービス」を自社開発するなど投資を続けてきました。電子お薬手帳「お薬手帳プラス」のアプリは、14年に私が責任者として立ち上げたものですが、当初は「高齢者には難しいのでは」と疑問視する声もありました。しかし、現在では比較的高齢の方々にもご利用いただき、顧客満足度向上につながっているという実績も出ています。

 昨今では医療分野におけるデジタル化が急速に進みつつあります。オンライン服薬指導の普及や電子処方箋の活用に向けた議論が開始されたり、マイナンバーカードが健康保険証として利用可能になるなどDXに向けた様々な施策が進められています。DXというと「効率」と「質」をトレードオフのように捉える人もいますが、これまでの経験から二兎を追うことは可能だと考えています。当社は一民間企業にすぎませんが、医療財政がひっ迫するなかでも国民皆保険を維持できる体制づくりに貢献するとともに、当社の持続的な成長と顧客満足度をより高めていくために、DX戦略を策定しました。

DX推進において、特徴的な取り組みについて教えてください。

三津原 医師のハードワークはよく知られていることですが、働き方を改革する取り組みとして、医師の仕事の一部を看護師や薬剤師など他の医療従事者に任せる「タスク・シフト」が大きなトレンドになっています。こうした状況に伴い、薬局が負うべき責任や業務はもちろん、扱う情報量も増大しています。その情報には、患者さまとのコミュニケーションから得られるものもプラスされます。

 例えば、医師の前で血圧を測ると高くなる「白衣高血圧」の例があるように、人は医師の前だと緊張しがちです。その点、薬剤師に対しては心理的ハードルが下がるようで、ご自身の状態をいろいろと話す患者さまは多いものです。そうしたところから取得した情報も含め、データとしてきちんと蓄積して一元化し、患者さまや医療従事者など様々なステークホルダーに新たな価値としてフィードバックしていきます。そのためのデジタルプラットフォームづくりを目指しています。

■ DXで新たな価値を提供する
■ DXで新たな価値を提供する
出所: 日本調剤
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ESG経営で注力したい取り組みについて聞かせてください。

三津原 事業を支える経営資源である人材のマネジメントです。薬剤師を中心に従業員の7割が女性ですので、出産後も働きやすい環境づくりなどを進め、ここ5年は離職率が下がっています。採用についても「マイナビ・日経2022年卒大学生就職企業人気ランキング」において「化学・薬学系」カテゴリで1位となりました。今でこそ好調ですが、正直なところ7年ほど前はどん底でした。合同企業説明会では当社に志望者が集まらず、社員が採れない状態でした。働きやすい職場づくりや薬剤師教育はしっかり行っていたのでポテンシャルはありましたが、十分にPRできていなかったのです。

 そこで、薬剤師のスキルアップを支える教育システムや資格取得のサポート制度を常にアップデートし、その都度適切にPRしました。さらに先輩薬剤師が情報発信するといったことを積み重ねると同時に、私も採用活動のフロントに立ち、当社が毎年実施している薬剤師インターンシップで社長講演を実施するなど力を注いだ結果、採用が好転しました。戦略的に質の高い人材を採用し、育成する。それが業績に結びつくことを実感しています。今後も人的資本に積極的な投資を行っていきます。