聞き手/:小林 暢子(日経BP 総合研究所主席研究員)

環境保護方針の下、熱帯雨林を保全して持続可能性を追求しながら事業を進めている。インドネシアで開催される2022年のG20(20カ国・地域首脳会合)では、他社との共創に期待する。

事業概要とインドネシアでの森林管理の必要性について教えてください。

エリム・スリタバ
エリム・スリタバ
APP 持続可能性及びステークホルダー担当役員
1973年インドネシア 南スラウェシ州生まれ。2005年APPグループのシナルマス・フォレストリー(現APPフォレストリー)入社。13年のAPPグループによる森林保護方針(FCP)の発表以降、現場における実施責任者を務める。14年より戦略的コーポレートリレーション&HRディレクター、17年より現職(写真提供:APP)

エリム・スリタバ 氏(以下、敬称略) APP(アジア・パルプ・アンド・ペーパー)グループは中国、インドネシアに生産拠点を持つアジア最大級の製紙会社です。年間約2000万tの紙・パルプを生産し、世界中に提供しています。

 環境保全については「サステナビリティ・ロードマップ・ビジョン2030」を策定しています。サステナビリティ戦略と日々の業務の指針として、政府の方針に沿って森林環境を保全し、持続可能性を追求しながら事業を進めています。

 インドネシアには南米アマゾン、アフリカのコンゴに次ぐ熱帯雨林があります。政府は2030年までに温室効果ガス29%削減、60年カーボンニュートラルを表明しています。さらに、30年までに森林地域においてCO₂吸収量が排出量を上回る「カーボンネットシンク」の達成も掲げています。私たちは森林保全などの取り組みにより、これらの実現に貢献したいと考えています。

自然林を伐採しない森林保護方針を定め、植林木による製紙事業を進めています。

スリタバ 13年に策定した森林保護方針の下で、バージンパルプ原料を100%植林木由来にしました。「景観レベルの森林保護」という方針で、「独立評価機関から保護価値が高く炭素貯留量が多い」と評価された森林は保全し、それ以外の地域だけを開発しています。

 スマトラ島とカリマンタン島では、政府から認可を得た伐採権保有地の20%、約60万haの森林保全に取り組んでいます。16年に人工衛星の森林監視システムを導入し、違法伐採や森林火災などをほぼリアルタイムで検知できるようになりました。

日本の売り上げの一部を寄付して推進している「森の再生プロジェクト」<span class="fontSizeS">(出所:APP)</span>
日本の売り上げの一部を寄付して推進している「森の再生プロジェクト」(出所:APP)

 以前は1年間に自然林の5%近くが破壊されていましたが、現在は1%未満です。健康な状態の森林が約60%まで減っていましたが、現在は79%まで改善しています。

 日本では販売する製品の売り上げの一部を、インドネシアの熱帯雨林保護・再生支援をするベランターラ環境保護基金に寄付し、森林火災や違法伐採で荒廃した森林に自生種の苗を植える「森の再生プロジェクト」を推進しています。

住民支援を通じた森林保全

DMPA(森林火災防止のための地域活性化)プログラムについて、具体的な内容を教えてください。

スリタバ 森林火災は、事業と環境保護にとって大きな脅威です。森林火災は自然発火だけでなく、地域住民による焼き畑など経済的な必要性から生じる場合があります。