聞き手/安達 功(日経BP 総合研究所フェロー)

2050年に向けた環境ビジョンを制定し、「ネット・ゼロ・カーボン」を目指す。サステナブルな森林資源を核とした革新的な研究開発により持続可能な社会に貢献する。

2020年9月に制定した「環境ビジョン2050」と「環境行動目標2030」の概要を教えてください。

西 連(にし・むらじ)
西 連(にし・むらじ)
王子ホールディングス グループ経営委員 イノベーション推進本部長
1984年王子製紙入社。2000年王子エンジニアリング出向、08年江蘇王子製紙(中国)出向、18年王子エフテックス取締役中津工場長、20年代表取締役社長(王子ホールディングスグループ経営委員)を経て、21年4月より現職(写真:川田 雅宏)

西 連 氏(以下、敬称略) 木材を主要原料とする当社では気候変動問題を経営上の重要課題と捉え、この問題に取り組むことが事業の持続可能性を高めると考えています。この方向性を示すため、50年に温室効果ガス排出を実質ゼロとする「ネット・ゼロ・カーボン」を中核とした「環境ビジョン2050」と、そのマイルストーンとして、30年に18年度対比で70%以上削減する「環境行動目標2030」を制定しました。当社は創業間もない頃から再生可能資源である木で紙を作り、約58万haに及ぶ社有林の保全・植林を通じてCO₂の吸収・固定に寄与してきました。森林資源を核としたコアコンピタンスを生かすと同時に製造・物流部門で省エネルギー化などを進め、脱炭素に取り組んでいきます。

持続可能な社会の実現に向けて、環境に配慮した製品の開発やソリューションを提供しています。

西 この新規分野を担うのが、研究開発部門を前身とするイノベーション推進本部です。150年近く培ってきた製紙技術と木質資源を基点とし、革新的な研究開発を行っています。現在では、紙素材の環境対応製品の拡充、セルロースナノファイバー(CNF)など木質由来の新素材の開発、自動包装システムをはじめとする新たなソリューション事業を3本柱とし、事業化につなげるインキュベータの役割を果たしています。

社会課題に紙素材が貢献

紙素材の環境対応製品とは、具体的にどのようなものですか。

西 気候変動、海洋プラスチックなどの社会課題に対して紙素材が貢献できると考え、開発を進めています。その一例が、紙に様々な機能を付与することでプラスチックフィルムの代わりに使える紙製パッケージ「SILBIO 」シリーズです。酸素や水蒸気を通しにくいバリア性と、保香性や保湿性を備えた「SILBIOBARRIER」を開発し、販売しています。さらに、付与機能のバリエーションを増やし、普及を進めています。