内外で活発なコミュニティ活動

21年から強化したいもう一つのマテリアリティとして、「コミュニティ」を挙げています。

小路 新型コロナの流行によって、人と人のつながりの大切さを改めて認識させられました。アサヒグループはアフターコロナを見据え、つながりを取り戻すという意味で「RE:CONNECTION」というスローガンを掲げて、コミュニティの再構築に関わる取り組みをしています。

 例えば、14年から取り組んでいる「希望の大麦プロジェクト」という活動では、11年の東日本大震災で津波被害を受けた宮城県東松島市の農地を活用して、大麦を栽培しています。土地の有効活用と合わせて、お菓子やビールの商品化などを通じて地域の産業発展やコミュニティーの活性化を図っています。震災から10年の節目となる21年からは、「希望の大麦」を原料としたウイスキーの原酒製造に向けた準備にとりかかります。

宮城県東松島市での「希望の大麦プロジェクト」による大麦畑での作業風景。地ビールの原料としてもまた、人々をつなぐ役割を果たしている<br><span class="fontSizeS">(写真提供:アサヒグループホールディングス)</span>
宮城県東松島市での「希望の大麦プロジェクト」による大麦畑での作業風景。地ビールの原料としてもまた、人々をつなぐ役割を果たしている
(写真提供:アサヒグループホールディングス)

 海外では、イタリアのビールブランド「Peroni(ペローニ)」が中心となり、ビール大麦栽培と持続可能性の追求を目的に、麦芽工場、イタリアの国立農業研究センター、複数の地元大学の農学部とパートナーシップを組んで「キャンパス・ペローニ」というプロジェクトを実施しています。研究、トレーニング、イノベーション、農業生産者など各分野の人々の交流を促進する取り組みが進んでいます。

以前から、こども食堂に対する支援もしていますね。

小路 新型コロナによって困窮している人に対するサポートもまた、広い意味でコミュニティー活動と捉えています。これまでも、アサヒ飲料が健やかな成長の支援、安心して暮らせる地域社会の実現に向けて、こども食堂の支援をしてきましたが、今回のコロナ禍の状況のもと、20年3月にアサヒグループの商品約1億5000万円相当を、全国10都道府県のこども食堂・児童館などの施設へお届けしました。

環境への取り組みは協調領域

サステナビリティに関する取り組みとESGとの関係をどのように捉えていますか。

「人と人のつながりの大切さを再認識」<br><span class="fontSizeS">(写真:川田 雅宏)</span>
「人と人のつながりの大切さを再認識」
(写真:川田 雅宏)

小路 ESGに対する取り組みが投資判断に影響を及ぼすといわれていますが、ほとんどそれは意識していません。というのも、私たちの事業が自然の恵みで成り立っているからです。

 ビールは麦芽、ホップ、水からできていますし、飲料水もまた自然の恵みです。ですから、環境への取り組みを積極的に実施しないと、事業そのものが成り立たなくなります。私たちにとって、環境への取り組みは事業継続のために必要不可欠なものなのです。

サステナビリティを推進するにあたって、どのような課題があるとお考えですか。

小路 環境対策というのは会社ごとに取り組むのではなく、業界、産業をあげて共同歩調をとり各社の持っている技術を開示して進めていくことが大切です。そうすることでスピードが速まり、成果も大きくなります。それが業界のみならず、ひいては日本全体にスピード感と成果をもたらします。場合によっては世界のベストプラクティスにつながっていくことでしょう。

同業他社や他業種とのパートナーシップが大事だということですね。

小路 環境やコミュニティへの取り組みは、競争領域ではなくて協調領域だと私は思っています。例えば、アサヒビールは17年9月より同業のキリンビール、サッポロビール、サントリービールと北海道において共同物流を実施し、JR貨物の協力をいただいて商品を集積し、配送先ごとに各社の積み込み配送をしています。競争領域はあくまでも商品ブランドや営業でのことであって、こうした物流や配送は協調領域であるべきです。

 現に、この共同物流では、それぞれの物流コストや技術をすべて開示して取り組みました。モーダルシフトでCO2の削減に貢献したことで、国土交通省からも評価をいただいています。

 現在では共同物流のエリアを拡大しつつあります。飲料業界でもビール業界でも、共同物流をすることによってCO2の排出量を減らすことが可能になります。

 こうした環境への取り組みについて、産業をあげて、あるいは産業の枠を超えてチャレンジしていくことがこれからはさらに重要になってくると考えています。