聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

コロナ禍の中、ものづくりの力を生かした医療支援など、自発的な社会貢献活動が進む。SDGsへの使命感が新しい挑戦への原動力となり、モビリティカンパニーへの変革を後押しする。

2020年2月、新設の Deputy Chief Sustainability Officer(DCSO)に就任後、新型コロナウイルス感染症の拡大に直面しました。振り返ってどんな1年でしたか。

大塚友美(おおつか・ゆみ)
トヨタ自動車 Deputy Chief Sustainability Officer
1992年トヨタ自動車入社。初代ヴィッツなど国内向け商品の企画、ダイバーシティプロジェクトなどの人事施策企画・推進、海外営業部門にて収益・人事管理、未来のモビリティのコンセプト企画、GAZOO Racing Company(モータースポーツ・スポーツカー)統括など複数分野を経験。途中、ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスにてMBA(経営学修士)取得。2020年2月よりDeputy Chief Sustainability Officer(新設)。(撮影:村田 和聡)

大塚 友美 氏(以下、敬称略) DCSOに任命された際、私に課せられた役割は「サステナビリティに関する社内の取り組みを連携・加速すること」「ステークホルダーの方々に取り組みを伝え、共感やサポートをいただくこと」の2つでした。DCSOとして具体的に何をすべきかを調べたり、他社の事例を学んだりと模索しつつスタートしたところを襲ったのが、コロナ禍です。

 コロナをきっかけに、企業が社会課題にどう向き合うべきかが一層フォーカスされるようになったと感じます。社員たちもこの問題に大いに関心を持ち、現場で自発的に「自分たちにできること」を考えた活動を始めました。その活動を社内外に伝える仕事を通じて、私自身も改めてDCSOの役割を理解し、前進することができたと思います。

フェースシールド、マスクを生産

具体的に、コロナに対してどのような活動が行われましたか。

大塚 ものづくりのノウハウを生かし、医療現場を支援する取り組みが進みました。医療用のフェースシールドやマスクを生産したほか、飛沫感染を抑止する仕様の車両づくりも手掛けました。医療用防護ガウンの生産に挑戦したかっぱの専門店を支援し、トヨタ生産方式による改善で生産量を100倍にした例もあります。日本だけでなくグローバルにも多くの事例があり、それぞれの活動を社内で共有しています。

 通常の仕事以上にニーズが切迫する中、従来とは働き方も変え、素早い意思決定や組織の壁を越えた動きが実践されました。ものづくりの力を生かし、社会に貢献する喜びを味わった社員も多かったと思います。

SDGsやESGに取り組むサステナビリティ推進室には様々な情報が集まります。それらをどう生かしましたか。

大塚 各職場で自発的に考え、実行した活動内容を「知ってほしい」または「アドバイスがほしい」という形で私たちのところに集まるので、それらを整理し必要なところにつなげてきました。

 事例の1つが足踏み式消毒スタンド「しょうどく大使」です。コロナ禍で生産ラインの稼働を停止せざるを得なくなった工場のメンバーが「仲間から感染者を出さない」という思いで製作したものでしたが、完成品は一般的に広く活用していただけると判断しました。試作品を医療機関などに持ち込み、「もっと消毒液がたくさん出るように」「高さの調整ができるものを」といった声をもとに改善を重ね、20年12月に販売を開始しました。

■ 社員の力を結集し、ものづくりのノウハウを生かした支援が実現
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工場メンバーの自発的な取り組みがきっかけで、足踏み式消毒スタンド「しょうどく大使」の販売を始めた
医療用防護ガウンの生産をサポートし、トヨタ生産方式による改善で生産量を100倍にした
(写真提供:トヨタ自動車)