ESGへの投資が主流に

金融機関にとっても大きなチャンスになりますね。

「投資支援を通じて課題解決に寄与」<br><span class="fontSizeS">(写真:村田 和聡)</span>
「投資支援を通じて課題解決に寄与」
(写真:村田 和聡)

飯山 SDGs実現や地球温暖化対策には、多額の財源が必要です。国際エネルギー機関(IEA)の推計によると、温室効果ガス排出削減などの新たな国際枠組みであるパリ協定の目標達成に向けて、40年までに総額59兆~71兆ドルのコストがかかるといいます。これらの財源を適切に確保すべく、資本市場におけるサステナブルファイナンスが大きな役割を果たします。

 金融機関自身も、リスクと機会をしっかりと受け止める必要があります。例えば化石燃料関連の投融資は、中長期的な視野に立って慎重な判断が求められる上、金融機関自身が座礁資産にならないよう事業ポートフォリオの再構築も求められています。

米資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)による「フィンク・レター」の世界経済に対する見通しと運用方針が注目を集める一方で、ブラックロック自体に株主提案が出るなど、金融機関に対する投資家の見方も変わりました。

飯山 金融機関自身がきちんとESGに対応できているのかという投資家や顧客の目は感じます。企業にESGやSDGsへの対応を提案する以上、金融機関自身が襟を正して取り組むことが大切です。

 新型コロナウイルス感染症の問題を経て、ESG/サステナブルファイナンスが金融市場で主流になりつつある中、金融機関の経営そのものにESG/サステナブルファイナンスをどう織り込んでいくかといった議論も多くの金融機関で聞かれるようになりました。

課題解決を通じて持続的成長

野村グループは、サステナブルファイナンスにどのような指針で取り組んでいるのですか。

飯山 創業100年を迎える25年に向けて、経営ビジョンで「社会課題の解決を通じて持続的な成長を実現する」ことを掲げ、持続可能な社会の創造に資する金融サービスを提供します。サステナブルファイナンスは、最重要課題の1つとして位置づけています。

 奥田健太郎グループCEOが議長を務めるESG委員会のメンバーと経営会議メンバーとを一致させ、執行の最高意思決定機関のなかでESGを戦略的に推進していく体制にしました。ESG委員会の下部組織に4つの分科会を置き、サステナビリティに関するあらゆる取り組みについてスピード感をもって意思決定します。SDGsへの貢献に向けて「Drive Sustainability.」というスローガンを掲げ、持続可能な社会の実現と社会課題の解決のため、ESG/SDGsに関連する活動に積極的に取り組んでいます。

■ 野村グループは社会課題解決を通じて持続的な成長を目指す
■ 野村グループは社会課題解決を通じて持続的な成長を目指す
※21年3月期は2020年11月20日現在
(出所:野村ホールディングス)
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 20年4月には、米国のグリーンテック・キャピタルを買収しました。主にサステナブルテクノロジーとインフラストラクチャ―、産業・環境サービスの分野で、M&Aや資金調達のアドバイザリー・サービスを専門に行います。ESG市場の専門知識を有する75人のプロフェッショナルが、環境課題に関して長期的かつ財務的に持続可能な方法で顧客をサポートします。

グリーンボンドなど使途が明確な資金調達を発行元は意識し、引受先もステークホルダーに対して説明しやすくなっています。

飯山 どういう趣旨で投資をしているのかが問われるようになっているのだと思います。

 当社はグリーンボンド、ソーシャルボンドの引き受けについて、国内の債券引き受けの専門部署であるDCM部にサステナブルファイナンス課を設置し、専任の担当者を置いて案件創出に取り組んでいます。海外では欧州の拠点である英ロンドンにサステナブルファイナンスの引き受け専任の担当者を配置しています。20年に欧州連合(EU)が新型コロナウイルスの感染爆発で影響を受けた加盟国に対して1000億ユーロの資金援助を行う「失業リスク緩和のための緊急支援策(SURE)」プログラムの財源調達を目的に起債したソーシャルボンドでは、主幹事を務めました。

 環境・社会配慮型の新株予約権型ファイナンスを「サステナブルFITs」と名付け、資金使途がESG/SDGsに貢献する適格な資金調達であるという第三者評価を取得して透明性を高める工夫をしています。リテール分野ではESG投信販売に力を入れ、当社のESGファンドの純資産残高は5300億円以上(21年1月時点)になっています。