ESG投資のリターンをどう評価していますか。

飯山 製薬大手のエーザイが、ESGの取り組みが何年後に企業価値として表れるかを示した統合報告書を20年8月に公表しました。同社の柳良平専務執行役最高財務責任者(CFO)は、ESGの取り組みに関する数値と、企業価値を示す経営指標であるPBR(株価純資産倍率)との相関を調べ、ESGの取り組みがPBRの向上につながることを示しました。リターンを求める観点からもESG投資は意味があるのです。

ESG関連情報を発信

サステナビリティ研究センター設立の背景や意図について教えてください。

飯山 私が社長を務める野村グループのシンクタンク、野村資本市場研究所は、従来から金融・資本市場および金融機関の制度・構造・動向に関する研究を展開しています。

 近年はESG/サステナブルファイナンスに関する研究が増えていました。そこで19年12月、野村サステナビリティ研究センターを設立しました。

 研究センターは、サステナビリティ分野を金融・資本市場に関する専門性の切り口で研究するユニークな存在です。

■ 野村グループが推進するサステナブルファイナンス
■ 野村グループが推進するサステナブルファイナンス
出所:野村ホールディングス
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 サステナビリティ関連のリサーチに注力し、アドバイザーと内部の専門家の横断的な協働を行います。学習院大学教授・東京大学名誉教授の神田秀樹氏、東洋大学大学院教授・公民連携専攻長の根本祐二氏、高崎経済大学教授の水口剛氏、神戸大学経済経営研究所教授・副所長の家森信善氏の4人にアドバイザーに就任して頂き、社内向けの勉強会や社外の投資家や企業に対する提言などの情報発信をしています。

■ デジタルブックなどで情報発信
■ デジタルブックなどで情報発信
野村サステナビリティ研究センターは季刊誌『野村サステナビリティクォータリー』などでESG関連情報を発信している(出所:野村ホールディングス)

 加えて「野村サステナビリティクォータリー」という季刊誌をデジタルブック主体で発行しています。アドバイザーを含む学識経験者や国内外の有識者の外部寄稿に加え、約20人の研究員が最新のサステナビリティ関連の潮流を発信しています。

今後の課題と強化ポイントを教えていただけますか。

飯山 世の中の流れに敏感になり、理想的には半歩か一歩先を進んでいくことが重要です。企業研究ではセクター分析とサステナビリティ研究は不可分になると思います。

 ESGへの取り組みは、現時点では財務上の数値に表れていませんが、前述したように中長期の価値につながるということであれば、現在の企業価値を評価する指標にもなるでしょう。

 企業はこうした非財務情報をわかりやすく開示し、対外的に発信する方法の確立が不可欠です。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のような枠組がありますが、企業側はどのように情報発信していけば市場から評価してもらえるか、アナリスト側はどういう数字ならば評価しやすいかについて徐々に整備されると思います。