KV30ではサステナビリティの5つの施策を打ち出しています。具体的にお聞かせください。

池川 09年、当時の鳩山由紀夫首相が20年に温室効果ガスの1990年比25%削減を打ち出した時、ほとんどの人が驚きました。ところが今となっては、その目標では少ないと言われるようになり、「2050年にカーボンニュートラル」となりました。カーボンニュートラルは非常に強烈な言葉で、排出されるCO2を利用する技術がないと、ゼロにはなりません。

 化学業界は鉄鋼業界に次いで、CO2の排出量が多い業界です。ですから、排出削減だけでなく、CO2利用をビジネスチャンスとして捉えることが重要です。そのカギを握るのが1つめの施策であるライフサイクルアセスメント(LCA)の進化です。

 製品のライフサイクル全体に対する環境負荷の測定や財務評価の仕組みがないと、CO2排出量を客観的に捉えられません。欧米の基準に見合う形で国際的な議論ができるようにしていくためにもLCAの進化が必要です。

 2つめは環境インパクトの削減です。私たちは工場を稼働させるために電力会社から電気を買っていますが、福島原発事故以来、日本のエネルギー生産は火力発電にシフトし、CO2排出量が増えています。カーボンニュートラルの実現には洋上風力や太陽光などの再生可能エネルギーを利用した発電に切り替えていかなければなりません。

 一方で、化学会社では自家発電に大きく依存しており、そこで必要な電力と水蒸気を作っています。自家発電は石炭を燃料にしている場合が多いのですが、今後は液化天然ガス(LNG)などCO2排出量の少ないものにしていきます。そして、50年のカーボンニュートラルを見据えて、30年度に国内のCO2排出を13年度比26%削減した上で、50年の排出ゼロに向けて取り組んでいきます。

成長加速目指し、人事制度を改革

 施策の3つめはサーキュラーエコノミーの推進で、プラスチックリサイクルなどをビジネスにしていきます。4つめがこれらと組み合わせたKAITEKIファクトリーの可能性検討で、コンビナートの中で、スマートファクトリーを中心に地域社会と融合したエコシステムを実現していきます。そして最後がサステナビリティマネジメントの経営基盤構築で、LCAツールを活用した経営の実行です。

人事制度・組織改革ではどのような改革を進めていくのでしょうか。

池川 ペイフォージョブの徹底、人事制度のマルチ化、経営理念の共有の3つです。ペイフォージョブの徹底は、最終的には年功序列的な報酬制度の見直しに行き着きます。従来の労働慣行から見ると厳しいですが、実現しないと、人材の多様性、流動性、専門性に対応していくことができません。

 また、私たちはメーカーなので、仕事は研究開発、生産、販売、企画など多岐にわたります。それぞれ仕事の要求スキルややり方が異なるのですが、今までの人事システムは1つの考え方でくくっていました。それには限界が来ており、業務に応じて異なる考え方を採用した人事制度のマルチ化で、多様性を確保していきます。

 そうすると、複数の人事システムが1つの会社の中で同居することになるので、会社としての一体感が薄れていきます。求心力を取り戻していく核になるのは経営理念で、「KAITEKI」という理念を社員全員が共有していくようにします。

 こうした改革を通して、人材の流動性、多様性、専門性を包含する許容力を持つ人事制度を確立します。成長の加速に貢献するデジタルネイティブが躍動して、インフラとしてのDX(デジタルトランスフォーメーション)を使いこなせる会社を目指していきます。

■ KAITEKI Vision 30策定のアプローチ
■ KAITEKI Vision 30策定のアプローチ
出所:三菱ケミカルホールディングス
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