聞き手/杉山 俊幸(日経BP 総合研究所主席研究員)

「サステナブル中期計画2023」発表から1年、社会課題の解決に積極的に動く。電気自動車(EV)導入をはじめ脱炭素社会の実現に向けた取り組みを加速する。

2021年1月に「サステナブル中期計画2023」を策定しました。その狙いを教えてください。

長尾 裕(ながお・ゆたか)
長尾 裕(ながお・ゆたか)
ヤマトホールディングス 代表取締役社長
1965年生まれ。88年ヤマト運輸入社。2010年同社執行役員 関東支社長、15年同社代表取締役社長 社長執行役員 兼 ヤマトホールディングス執行役員、17年同社代表取締役社長 社長執行役員 兼 ヤマトホールディングス取締役執行役員、19年同社取締役 兼 ヤマトホールディングス代表取締役社長 社長執行役員を経て、21年4月より現職(写真:吉澤 咲子)

長尾 裕 氏(以下、敬称略) 当社は日本全国に展開する約4000カ所の拠点において幅広いお客様に宅急便のサービスを提供し、その取り扱い個数も今期は22億個を超える見込みです。それだけに、近年の気候変動による自然災害の被害を受けるリスクも高く、以前から環境問題に取り組んできました。そこで、経営のアジェンダとして、より体系的に捉え、サステナブル経営の強化に向けて、経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」を20年1月に策定しました。その翌年の21年1月には、「つなぐ、未来を届ける、グリーン物流」と「共創による、フェアで、“誰一人取り残さない”社会の実現への貢献」という2つのビジョンの実現に向けて、環境と社会領域の重要課題に対する目標と具体的な行動を定めた「サステナブル中期計画2023」を策定しました。多様なお客様や協力会社、約22万人の社員など多岐にわたるステークホルダー(利害関係者)と事業を営む当社にとって、サステナブル経営は大きな責務と考えています。

「サステナブル中期計画2023」の最終年度に、環境領域で温室効果ガス排出量20年度比10%削減を目標としています。どう取り組みますか。

長尾 当社は、ハイブリッド自動車など低炭素車両へのシフトを積極的に進めてきました。電気自動車(EV)化にも力を入れ、21年11月から日野自動車と超低床・ウォークスルータイプの小型EVトラックを用いた集配業務の実証実験を開始しています。車体がコンパクトで、 普通免許で運転できるため、路地の多い住宅街での業務にも適しています。また、運転席から荷室への移動がしやすく、実際に年末の繁忙期に使用したドライバーには「非常に使いやすい」と好評でした。今夏には実運用できればと考えています。

 ただ、EV化にあたっては、導入後の充電インフラの整備が大きな課題となります。当社では今後、全国の各拠点に充電設備を配備し、使用する電力に関しては太陽光や風力など地域ごとに調達しやすい電力を検討していく予定です。一方で、物流業界は中小企業が多数参入しています。そのため、EVを導入したくても充電インフラなどが障壁となる可能性があります。その状況下で業界全体として取り組みを推進していくために、率先して私たちが充電インフラを整え、将来的にはそれをオープンにして協力会社や同業他社と共有することも見据えています。カートリッジ式バッテリーも有効な手段になる可能性があります。

■ 日野自動車が開発した超低床・ウォークスルーの小型BEVを用いて、集配業務の実証実験を実施
■ 日野自動車が開発した超低床・ウォークスルーの小型BEVを用いて、集配業務の実証実験を実施
実証実験では、温室効果ガス排出量削減効果や、集配業務における効率性・作業負荷低減の効果などを確認する<br><span class="fontSizeS">(出所:ヤマト運輸)</span>
実証実験では、温室効果ガス排出量削減効果や、集配業務における効率性・作業負荷低減の効果などを確認する<br><span class="fontSizeS">(出所:ヤマト運輸)</span>
実証実験では、温室効果ガス排出量削減効果や、集配業務における効率性・作業負荷低減の効果などを確認する
(出所:ヤマト運輸)