聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

総合製紙メーカーのAPPはインドネシアの違法伐採や森林火災の抑制に取り組む。地域社会との共生を目指し、子育て女性に農業や伝統工芸品などの生計手段も提供する。

2013年に発表した「森林保護方針(FCP)」への取り組み状況を教えてください。

タン・ウイ・シアン
タン・ウイ・シアン
エイピーピー・ジャパン 代表取締役会長
1961年インドネシアの北スマトラ州生まれ。86年ジャカルタのトリサクティ大学経済学部卒業後、キャセイ・パシフィック航空入社、93年アジア・パルプ・アンド・ペーパー(APP)入社、シンガポール勤務などを経て96年にAPPの日本法人であるエイピーピー・ジャパンに移籍、2014年から現職(写真:村田和聡)

タン・ウイ・シアン 氏(以下、敬称略) この8年間、森林保護方針で宣言した自然林伐採ゼロ方針を堅持し、責任ある森林管理を実施しています。その結果、APPが管理するインドネシアの植林地は、国際的な森林認証「PEFC国際森林認証」を取得することができました。さらにAPPの伐採権保有地にある50万ha以上の自然林を植林開発から保全し、自然林の保護と再生に努めています。

 一方、課題としては第三者による違法伐採、土地紛争、森林火災などがあります。APPは地域活性化プログラムを立ち上げるなどして問題に対処しており、APPが保護する自然林の第三者による減失率は12年頃の約5%から19年には0.35%まで抑えることができました。森林火災の被災面積比率は16年以降、2%未満に抑えています。

12年に「持続可能性ロードマップ ビジョン(SRV)2020」を策定しました。進捗状況はいかがですか。

タン SRV2020は10項目からなるAPPの基本的な環境取り組み目標と方針を定めたものです。例えば「原料調達」では全てのパルプを森林認証材としました。「地域活性化」では森林火災防止のための地域活性化プログラムを実施中で、19年末時点で390の村が参加しています。「水の管理」では、20年の水使用目標量は13年比で10%削減でしたが、19年には29%まで削減しました。

 19年末までに9項目でほぼ達成できたのですが、唯一達成できていないのが「従業員の幸福」です。労働災害による従業員および契約業者の死亡事故をゼロにするという目標については、今後も継続して取り組んでいきます。

「持続可能性ロードマップ ビジョン(SRV)2030」も策定しました。

タン 環境取り組み目標の対象を拡大し、SDGsの実現に向け進化させる必要があることを強く認識しました。新たにSRV2030を策定し、「生産」「森林」「人々」の3つを柱にすえています。「生産」ではカーボンフットプリント30%削減、「森林」では50万ha以上の自然林の保全、「人々」では生活の向上を目指します。この3つはすべて気候変動対策に結びついています。森林を保全すればCO2の吸収源になりますし、人々の生活が向上すれば焼き畑が減り森林火災が抑えられ、火災に伴うCO2の排出が減少するからです。森林火災対策には16年から力を入れており、これまでに約1億5000万ドル(150億円)を投じてきました。

■「持続可能性ロードマップビジョン2030」の3つの柱
■「持続可能性ロードマップビジョン2030」の3つの柱
「持続可能性ロードマップビジョン2030」は持続可能性誓約の進化版として目標を設定。企業統治、防火と火災管理、ジェンダーフリー、腐敗防止、環境フットプリントを対象としており、「生産」「森林」「人々」の3本柱に集約される
(図版提供:エーピーピー・ジャパン)
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