聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

電話から光、光からICTソリューションへと事業を進めてきた。農業従事者や中小企業などの困りごとの解決を支援し、地域の活性化につなげる。

再編の動きが活発なNTTグループで、東日本電信電話(NTT東日本)が担う役割と事業の方向性をお聞かせ下さい。

井上 福造(いのうえ・ふくぞう)
東日本電信電話 代表取締役社長
1955年生まれ。1980年日本電信電話公社入社。2009年東日本電信電話取締役コンシューマ事業推進本部長ブロードバンドサービス部長、12年取締役経営企画部長、14年常務取締役ビジネス開発本部長、15年代表取締役常務取締役ビジネス開発本部長、16年代表取締役副社長ビジネス開発本部長などを経て、18年より現職(写真:大槻 純一)

井上 福造 氏(以下、敬称略) NTTの原点は電話事業で、その後光ファイバーの事業が加わり、現在ではICTソリューションの提供が柱です。その中でNTT東日本はグループのサービスのフロントを担って、地域のお客様の困りごとを解決していくのが使命です。

新型コロナが事業に及ぼした影響はどうでしょうか。

井上 とても大きな影響がありました。社会のデジタル化は進んできたものの、必ずしもすべてがオンラインにつながっていませんでした。コロナで非接触が必須になる中、オンラインが必要になり、通信を使う状況が急増しました。

 一方で、私たちは営業も保守も対面型だったので、ビジネスチャンスを十分に捉えきれていなかったことも分かりました。

子会社を相次いで発足させていますが、その背景と狙いをお聞かせ下さい。

井上 私たちのビジネスの土台は地域社会です。地域が元気にならないと、私たちも成長しません。通信の活用の可能性は拡大していますが、私たち自身が新しい領域に踏み込み切れていません。また、顧客が自社の人手不足を生産性向上でカバーできることに気づかないこともあります。それに対して、踏み込んで提案していく必要があります。

 地域の困りごとを聞く中で、第1次産業が最も課題が多く、その課題をICTでカバー可能なことが分かりました。そこで、各課題の分野ごとに事業ユニットを作ってソリューションを提供することにしたのです。通信をより広い分野に普及させていくための方策です。

具体的には、どのような取り組みを進めているのでしょうか。

井上 分かりやすいのは農業です。労働集約的で、高齢化が進んでいます。1人で広い田畑を見回るのは大変という声に対し、家にいながら田畑を監視できるソリューションの提供を始めました。

 そこから、ビニールハウスにICT機器を入れて、手をかけずに作物を作る施設園芸の世界にたどり着きました。そこでは農業法人に対して、大規模な施設園芸の構築と支援をするソリューションが必要です。そこで、NTTアグリテクノロジーを設立、知見の蓄積のために、自社でビニールハウスも作りました。

 文化・芸術などその他の分野でも文化財のデジタルアーカイブを作成しデジタルサイネージで鑑賞していただくといったデジタル化や配信の取り組みを進めています。

■ICTソリューションを活用したさまざまな取り組み
山梨県に建設中のICTを実装した次世代施設園芸(左)とその内部(右)
体験型美術館「Digital×北斎【序章】」を展開し文化・芸術のデジタル活用を検証する
(写真提供:東日本電信電話)