聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

MS&AD インシュアランス グループ ホールディングスは、「サイバー」「健康志向」「デジタル」の3分野でコロナ禍における保険の新たな可能性を追求する。ESG重視の投融資も拡げて、社会課題解決へのアプローチを増やす。

中期経営計画「Vision 2021」を推進する中、コロナ禍における保険の新たな可能性をどう捉えていますか。

樋口 哲司(ひぐち・てつじ)
MS&AD インシュアランス グループ ホールディングス 代表取締役 専務執行役員 グループCFO
1961年生まれ。84年住友海上火災保険に入社。2014年三井住友海上火災保険の執行役員東京本部長、16年取締役常務執行役員。17年MS&AD インシュアランス グループ ホールディングス執行役員。20年4月専務執行役員、同6月取締役専務執行役員(現職)(写真:大槻 純一)

樋口 哲司 氏(以下、敬称略) 2021年度までの4年間を対象にした「Vision 2021」で、世界トップ水準の保険金融グループの実現と、環境変化に迅速に対応できるレジリエント(強靭)な態勢の構築を目指しています。

 コロナ禍での保険の可能性ということで言えば、「サイバー」「健康志向」「デジタル」の3つで大きな変化があると考えています。サイバーについては、テレワークによって自宅など会社以外の場所での情報漏洩のリスクが高まっています。当社グループでは以前からサイバーセキュリティ保険を販売していますが、その需要は今後高まると思います。ただし、情報漏洩があったら保険金をお支払いしますというだけではなく、事前にサイバーセキュリティ対策の状況を「見える化」して発生を防ぐことが大切だと考えています。

 健康志向では、個人、企業ともに明らかにその意識が高まっています。企業の健康経営を支援する新商品「健康経営支援保険」を開発しました。東京大学センター・オブ・イノベーション(COI)プログラムが開発したAI(人工知能)による健康リスク予測モデルを搭載した健康管理アプリとコンサルティングサービスを組み合わせて、企業の健康経営への取り組みを持続的に支援し、社員の休業時には所得補償するというものです。これも予防機能と補償機能がセットになっています。

 デジタルについては、以前からCSV(社会との共通価値の創造)に取り組んでいますが、CSVとデジタルを掛け合わせることで新しい価値を提供したいと考えています。

 私たちの「価値創造ストーリー」では、リスクを見つけて伝え、リスクの発現を防ぎ、もしリスクが現実のものとなったときは経済的負担を小さくする―こうした考えに基づき、社会の課題解決にアプローチしています。

保険の事業会社のほかに機関投資家という側面もあり、その重要性が増しています。

樋口 私たちは日本版スチュワードシップ・コード活動に力を入れており、機関投資家として発行体との対話を積極的にさせていただいております。投融資においては、ESGを考慮し、中長期的な投資リターンの獲得とサステナビリティに関わる課題解決への貢献を目指しています。

 米国の最大手資産運用会社ブラックロックのCEO(最高経営責任者)ラリー・フィンク氏が公表した20年1月の通称「フィンク・レター」が気候変動対応を強く要請する内容だったこともあり、社会全体で気候変動対策により真剣に取り組まねばならないという機運が高まりました。

 当社グループも19年5月に事業活動におけるサステナビリティを考慮することを表明しました。それに続いて、20年9月に今後新設される石炭火力発電所の保険引き受けや投融資を原則行わないとの具体的な対応を定めました。

■MS&ADグループのサステナビリティへの取り組みの全体像
出所:MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス
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