聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

「豊かな発想と確かな品質で、人が集う環境づくりを通して、社会に貢献する。」をミッションとする。ニューノーマル時代に求められる場を提案し、新しい働き方を支える。

2020年来のコロナ禍は、事業にどのような影響を与えていますか。

中村 雅行(なかむら・まさゆき)
オカムラ 代表取締役 社長執行役員
1951年東京都生まれ。73年早稲田大学理工学部卒業後、岡村製作所(現オカムラ)入社。96年取締役、07年専務取締役を歴任。12年6月代表取締役社長、19年6月より現職(写真:大槻 純一)

中村 雅行 氏(以下、敬称略) 現在オカムラでは、人が集う場に対して最適な空間を提案する「オフィス環境事業」、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの店舗づくりを什器から内装まで手掛ける「商環境事業」、ロジスティクスをトータルにサポートする「物流システム事業」という3つの事業を展開しています。この中で、「オフィス環境事業」が大きな影響を受けており、需要の質が変化しています。

 その要因はコロナ禍でテレワークの導入が進んだため、余剰スペースが生じたオフィスを縮小する動きが企業に広がっていることにあります。例えば、これまで賃借していた5つのオフィスフロアのうち1フロアを解約した場合、4フロアを改装する必要が出てくるわけですが、先行きが不透明な時代ですから、日本的な対向式レイアウトのオフィスは過去のものになりつつあります。

具体的にはどのようなオフィスが求められているのでしょうか。

中村 一つの方向としては、テレワークやサテライトオフィスなど拠点の分散に対応できる、固定席のないフリーアドレスです。この流れによって、当社で販売しているデスクやキャビネットの需要は激減しました。しかし、逆の見方をすれば、これは大きなビジネスチャンスであるとともに、社会的責任を果たすことにもつながります。

 というのも、オカムラのミッションは「豊かな発想と確かな品質で、人が集う環境づくりを通して、社会に貢献する。」ことです。時代の大きな転換期にオフィスのしつらえだけでなく、「働き方」そのものを見直そうという企業が増えている今、そのお手伝いができると考えています。

業務のスタイルが変わっていくのですね。

 今後は、部署や役職にとらわれず、多様な経験やスキルを持つメンバーで構成される「クロス・ファンクショナル・チーム」によるプロジェクト型の業務スタイルが増えていくと思います。

 当社では、このようなチームの作業をサポートする「スプリント」という製品を開発しました。このシリーズのテーブルやスツール(背もたれのない椅子)、アイデアの深掘りや議論に欠かせないボードスタンドといったラインナップにはすべてキャスターを付け、自由にレイアウトできるように設計しています。また、リモートワークやウェブ会議の広がりにより、ワークブースの需要が増加しています。こうした新しい働き方に向け、当社ではワークブース「テレキューブ」を提案しています。

働きやすさなど従業員に寄り添った視点でのオフィスづくりが重要ということですね。

中村 当社の製品は、そこに寄与するものと自負しています。例えば、15年ほど前に電動で天板を上下できるデスクを発売しましたが、全く売れず廃番になりました。

 それが、2014年に「スイフト」という名で改めて販売したところ、順調に売れ始めました。「座りすぎは健康によくない」という研究結果が広く知られるようになり、立って仕事ができる商品ということで注目されるようになったのです。つまり、時代の価値観が変わり、「健康」ということが付加価値となって売れ始めた。こうした時代が求める付加価値こそ、社会の問題を解決する鍵にもなると考えています。