聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

データ流通、IoT・次世代通信、モビリティ、環境を注力事業に設定する。社会課題を解決する主体として、変革に挑戦する。

コロナ禍は人々の行動を大きく変えました。事業にどのような影響を与えていますか。

北島 義斉(きたじま・よしなり)
北島 義斉(きたじま・よしなり)
大日本印刷 代表取締役社長
1964年生まれ、95年大日本印刷入社。2001年取締役市谷事業部担当、03年常務取締役、05年専務取締役、09年代表取締役副社長を経て、18年から現職(写真:大槻 純一)

北島 義斉 氏(以下、敬称略) 悪い影響と良い影響の両面があります。悪い面ではイベントのチラシなど印刷関連の売り上げは減っています。その一方で、テレワークや巣ごもり需要で、PCやスマートフォン、テレビなどの出荷が増えて、リチウムイオン電池用バッテリーパウチ、ディスプレイ表面材などは好調です。

新しい生活様式を踏まえて、注力したい事業分野はどこでしょうか。

北島 人々の生活が豊かになるような分野を伸ばしていきます。2025年3月期までの中期経営計画では、データ流通、IoT・次世代通信、モビリティ、環境を注力事業として設定しています。

 20年4月にICTヘルスケアサポートセンターを開設し、遠隔保健指導サービスを始めました。オンライン診療の際、患者の皮膚や目の色を実際に近い色調で表示するカラーマネジメントサービスも開始しました。バッテリーパウチは、5G基地局の停電対策としてリチウムイオン電池設置の計画もあり、安定的に供給できる体制を整えていきます。

企業経営の中で、ESGをどのように位置づけていますか。

北島 企業活動のベースになるテーマだと捉えています。環境では1972年の環境部設立以来、事業活動と製品に対して、環境負荷低減などの施策を実施しています。またSDGsをよりよい社会づくりのものさしの1つとして捉え、社会課題の解決に取り組んでいます。

 その中で、人々の多様性を尊重し、人権に配慮することで、価値の創出、健康で安全な活力ある職場を目指しています。さらにコーポレートガバナンスの強化に努め、社員全員が日々、誠実に行動できるようにしています。

中期経営計画の中で「成長を支える経営基盤の強化」を挙げています。どのようなことを手掛けますか。

北島 成長に向けて、財務資本と非財務資本を統合的に活かし、経営基盤を強化していきます。非財務資本では、ダイバーシティ&インクルージョンを通じた新たな価値の創出のために、2019年度から人事諸制度を再構築してきました。その中で、副業・兼業、社内複業、複線型キャリアなどの制度も整えてきました。

 社内複業は他の部門に行き、週何時間か仕事をする制度で、組織の壁を取り払い、複数の部門の強みを掛け合わせて新しい価値を作り出す取り組みです。また目標管理制度も、個人目標とチームでの達成目標の2つで行うように改定していきます。

社内表彰制度も刷新されたと聞きました。

北島 20年度に、価値を評価するDNPアワードを新設しました。提供価値を評価し、価値創出方法と内容について社員が学び合うもので、リチウムイオン電池用バッテリーパウチなど4件が大賞に選ばれました。