聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

存在意義「パーパス」を定め、イノベーションで社会に信頼をもたらし、世界の持続可能性を追求する。DXの推進により、顧客の事業成長に貢献するため、スピード重視の経営判断を重視する。

2020年5月に富士通の「パーパス(存在意義)」を定めました。そこに込めた意味を教えてください。

時田 隆仁(ときた・たかひと)
富士通 代表取締役社長
1962年生まれ。88年東京工業大学工学部卒業、富士通入社。2014年金融システム事業本部長、15年執行役員。19年1月執行役員常務 グローバルデリバリーグループ長、同3月執行役員副社長、同6月代表取締役社長に就任。同10月よりCDXO(最高DX責任者)(写真提供:富士通)

時田 隆仁 氏(以下、敬称略) 私が入社したのは山本卓眞社長の時代で、テレビCMで「夢をかたちに 信頼と創造の富士通」というメッセージが使われていました。同世代の社員たちは皆、「夢をかたちに」という言葉が好きでした。

 20年の「ダボス会議」に参加し、グローバル企業のCEOと話す機会を得ましたが、彼らの話題は「社会の中でどうあるべきか」「環境問題や自然災害に対し、いかなる貢献ができるか」というものばかりで、私なりにとても刺激を受けました。

 19年6月、社長に就任した時、改めて富士通およびグループ全体はどういうところを目指すべきか、しっかりと定義しようと考えました。「One Fujitsu」として改革に取り組むには「パーパス」というものを定める必要があると思ったのです。

 言葉を数カ月かけて練りに練った末に、「わたしたちのパーパスは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくことです」と定め、すべての富士通従業員がこれを実現するため、挑戦・信頼・共感からなる「大切にする価値観」と「行動規範」に従って日々活動し、価値の創造に取り組むという「Fujitsu Way」をつくりました。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の可能性が広がり、「For Growth」と「For Stability」の2つで顧客に貢献するとしています。

時田 富士通はDXを推進する立場にある一方で、お客様の今をしっかりと支える使命があります。お客様の事業成長に貢献する「For Growth」と、お客様の事業の安定に貢献する「For Stability」の2つの事業領域でパーパスの実現を掲げています。この両軸をしっかりとフォーカスすることが必要不可欠だと考えています。

「Work Life Shift」も明確に打ち出されていますね。

時田 もともと社長に就任した時に人事部に指示し取り組んできました。新たな働き方や組織・人材マネジメントの変革を推進するための「Work Life Shift」ですが、コロナ禍で加速したことは確かです。テレワークには17年から取り組んでいますが、コロナ前のテレワーク率は20%。コロナ後は80%になり、緊急事態宣言下で本社は85%、SEの部署は90%以上になっています。

■「Fujitsu Way」を明確に定めた
出所:富士通
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