聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)
創業以来、社会貢献を強く意識しながら経営を続けてきた。「計測・制御・情報」の技術を軸とする事業で、サステナビリティ目標の達成を目指す。
2018年にサステナビリティ目標を作成しました。その背景と狙いを教えてください。

1963年生まれ。86年福徳相互銀行入行。92年横河電機に入社。2005年財務部長、11年執行役員経理財務本部長、14年取締役執行役員経理財務本部長を経て、19年4月から現職(写真:大槻 純一)
穴吹 淳一 氏(以下、敬称略) エネルギー産業、素材産業のプラントなどを中心とする幅広い分野の産業のお客様に対して、省エネ、省資源、安全対策などのソリューションを提供しています。つまり、お客様の事業を通じて、社会課題の解決に貢献しているといえます。企業理念においても社会貢献を掲げている当社では、15年に国連でSDGsが採択されたことを受け、サステナビリティ目標を設定し、未来世代のより豊かな人間社会のために「Net-zero Emissions」「Well-being」「Circular Economy」を3つのゴール(Three goals)としました。さらに、中期経営計画「Transformation 2020」の事業計画と整合する30年に向けたサステナビリティ中期目標を18年に設定し、Three goalsの実現に向けた取り組みを行っています。
Three goalsの実現につながる長期経営構想のなかで、長期的視点で注力する事業領域として「バイオエコノミー」を追加しました。この事業はESGの取り組みの中でどのような位置づけになりますか。
穴吹 持続可能な社会を実現する主要な柱として各国政府や企業が注目するバイオエコノミーは、健康、食糧、工業など幅広い分野で成長が予測されています。ここに当社の「計測・制御・情報」を核とする知見や技術を活かし、SDGsの達成と循環型社会の発展に寄与することを目指しています。20年6月にはバイオエコノミー関連の事業基盤確立に向けて、市場分析や市場開拓活動などを目的とする子会社「ヨコガワ・イノベーション・スイス」を設立しました。8月にはバイオマスの先端技術を持つスイスのスタートアップ企業であるBloom Biorenewablesに出資し、業務提携契約を締結しました。
コロナ禍にあっても新しい市場を攻めているのですね。20年末には再生可能エネルギー分野も強化しました。
穴吹 再生可能エネルギー市場の成長を支援し、よりクリーンで持続可能な未来に貢献するために、再生可能エネルギー設備向けのアセットパフォーマンス管理(APM)のソフトウエアプラットフォームを販売している米国のPower Factorsという企業と、グローバル再販契約を締結しました。今後は、フィールドセンサー、データ収集、制御技術といった当社の専門性と、Power Factorsの高度な分析技術とAPMソフトウェアの強力な組み合わせによって、再生可能エネルギー資源を効率的に拡大し、最適化させるという課題に取り組む企業を支援していきます。