聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

1890年の創業以来、「食料・水・環境」に関わる社会課題の解決に取り組んできた。複雑化・多様化する社会課題に対し、事業を横断したトータルソリューションの提供を目指す。

会社経営の基本に「ESGを中核に据えた事業運営」を挙げています。

北尾 裕一(きたお・ゆういち)
北尾 裕一(きたお・ゆういち)
クボタ 代表取締役社長
1956年兵庫県生まれ。79年久保田鉄工(現クボタ)に入社、トラクタ事業部長をはじめ、クボタの機械事業を牽引。2011年米国クボタトラクターコーポレーション社長、14年取締役常務執行役員、19年代表取締役副社長執行役員・機械事業本部長・イノベーションセンター所長、20年1月に代表取締役社長就任(写真:太田 未来子)

北尾 裕一 氏(以下、敬称略) 当社は約130年前、創業者の久保田権四郎がコレラから人々を救いたいと国内で初めて水道用鉄管の量産に成功しました。戦後は、食糧危機や高度経済成長期の公害問題など、その時代の社会課題の解決に向き合って事業を進めてきました。

 パンデミックや気候変動など、新たな社会課題が突き付けられる中で、2021年2月、30年を目標とした長期ビジョン「GMB2030」を策定しました。

 社会課題に直結したところで事業を展開してきたことが当社の強みであり、その価値を社内で共有・追及しようということになりました。それをクボタならではのESGということでK-ESGと名付け、経営の中心に据えることにしました。

長期ビジョン「GMB2030」の実現に向けた事業展開として3つのソリューションを挙げています。その1つが「スマート農業」です。

北尾 今日の農業の課題に、農業従事者の高齢化や後継者不足があります。農業機械の自動化や無人化によって省力化を図るとともに、農業への新規参入者を増やすためには、これまでは経験と勘でやってきた部分を「見える化」することが必要です。

 具体的には、コンバインなどに取り付けたセンサーで、米の収量はもちろん、タンパク質や水分の含有量まで数値化できます。そのデータを活用することで翌年の生産計画を作成することもできます。当社が開発した営農支援システム「KSAS(クボタスマートアグリシステム)」を使って、誰でも就農ができるようになれば日本の農業を守り、さらに持続可能な方向に発展させることができるでしょう。

 カーボンニュートラルの観点から言えば、日本の温室効果ガスの総排出量は約12億tとも言われていますが、その内、農業関連は約5000万tを占めています。その約半分は水田から出るメタンガスや、土中に残った肥料から発生する一酸化二窒素で、それぞれ温暖化効果がCO₂に比べて非常に高い。ICTなどの技術を活用すればこれらを削減でき、環境問題の解決にもつながります。

脱炭素に向けた事業展開において、アジアは大きな市場ですね。

北尾 日本の水田が約200万haなのに対し、例えばタイは約800万ha、インドは約3000万haもあります。タイでも工業化の進展により農村から人口が流出しており、今後、農業のスマート化が進むだろうと予想しています。ベトナムやフィリピン、インドネシアも同様で、アジア市場は当社の成長ドライバーの1つになっていくでしょう。

■ クボタグループ全体で取り組む長期ビジョン「GMB2030」
■ クボタグループ全体で取り組む長期ビジョン「GMB2030」
グループの在るべき姿として、「最も多くの顧客に信頼され、最も多くの社会貢献をなしうる企業=Global Major Brand(GMB)」となるようにGMB2030の実現に取り組む
(出所:クボタ)
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