聞き手/田中 太郎(日経ESG編集長)

2021年2月、新たな中長期経営戦略フレーム「Vision2030」を発表した。デジタルの力を活用しながら、オーラルヘルスなど4つの提供価値領域で成長を目指す。

2020年までの3カ年の中期経営計画「LIVE計画」の結果を踏まえて、今後の戦略を教えてください。

掬川 正純(きくかわ・まさずみ)
ライオン 代表取締役 社長執行役員 最高執行責任者
1984年東京大学農学部卒業後、ライオン株式会社入社。2012年取締役執行役員、16年常務取締役執行役員を経て18年代表取締役専務執行役員に就任。19年1月より現職(撮影:村田 和聡)

掬川 正純 氏(以下、敬称略) ライオングループは、2030年に向けた経営ビジョンに「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」を掲げています。その実現に向けて策定したLIVE計画では、3年間で1000億円規模の投資を行い、生産能力の増強や情報システムの整備など、経営基盤の強化で質的・量的な成長を狙いました。

 質的には一定の改善が進み、10年前に2~3%だった営業利益率が10%水準まで向上しました。ハミガキや目薬で高付加価値商品の構成比が高まり、浴室用洗剤など一部商品の単価を上げるといった成果がありました。量的には目標の売上高4000億円に届きませんでした。

 ここから10年は量的拡大も重視します。21年2月に新たな中長期戦略フレーム「Vision2030」を発表しました。成長を目指す提供価値領域を「オーラルヘルス」「インフェクションコントロール」「スマートハウスワーク」「ウェルビーイング」の4つに設定しています。事業そのものを変革しなくては成長に結びつかないという危機感を持ち、今後の道筋を示しています。

どのように成長を図りますか。

掬川 オーラルヘルスの領域では、口腔内のデジタルデータを活用して、一人ひとりに合ったケアを推奨するビジネスを探るなど事業を発展させます。インフェクションコントロールについては、家の中だけでなく、外出時や社会インフラの中で衛生管理の役に立つ事業を成長させたい。薬品やサプリメントは、従来の売り切り型ビジネスから、長期間にわたり関係性を保つようなプラットホームづくりに挑戦します。

コロナ禍の“巣ごもり”は日用品市場に追い風ですか。

掬川 台所用洗剤の売り上げは、20年に対前年比で2桁以上伸長しました。リモートワークで家にいることが増えた男性が家事デビューする絶好の機会でもあります。これは付加価値の高い商品を普及させるチャンスです。当社は以前から「もはやワンオペ家事の時代ではない」と、こすらず洗える浴室用洗剤「ルックプラス バスタブクレンジング」や、汚れを楽に落とせる台所用洗剤「Magica」など、ふだん家事をしない男性にも使いやすい価値を提案の軸としてきました。今後も家事体験、使用経験にフォーカスした商品づくりを実行していきます。

デジタルトランフォーメーション(DX)はどう推進しますか。

掬川 従来あったデジタルサイエンス室を、21年1月からDX推進部に発展させました。全社横断的にDXを統括・推進する役割を担います。業務の効率化はもちろん、成長を目指す4つの提供価値領域のビジネス変革にデジタルを活用していきます。