聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

2050年の脱炭素に向けてRE100に加盟、自社と顧客の環境目標達成に取り組む。様々なパートナーとの共創を通じて社会課題を解決し、社会のパラダイム変革を起こす「DX3.0」を推進する。

社会の脱炭素化に向け、プロジェクトを進めています。その状況を教えてください。

横山 賢次(よこやま・けんじ)
横山 賢次(よこやま・けんじ)
野村総合研究所 常務執行役員
1983年早稲田大学商学部卒業後、野村證券(現野村ホールディングス)入社。2006年ノムラ・バンク・インターナショナルPLC(ロンドン)社長、09年シニア・マネージング・ディレクター(グループ執行役員)、11年野村総合研究所執行役員、16年より常務執行役員 コーポレートコミュニケーション、総務、業務、調達管理、経理財務担当、サステナビリティ推進委員会委員長も務める(写真:中島 正之)
※記載の肩書は、取材当時のものです

横山 賢次 氏(以下、敬称略) 当社はコーポレートステートメントで、新しいビジネスモデルを次々と生み出す「未来創発」を掲げています。変化が激しく先の予測がつかないこの時代に、社会をしっかりと見据えながら確かな未来を切り開いていきたい。新しい価値を創造することで世の中に貢献していくため、「未来社会創発企業」として挑戦を続けていくという姿勢です。

 脱炭素に向けては、当社自身が2019年2月、事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる国際イニシアチブ「RE100」に加盟しました。

 18年9月には環境目標を改定し、パリ協定が求める世界の温度上昇を産業革命前から2℃未満に抑える「SBT2℃目標」の認証を取得しました。これを改定した「SBT1.5℃目標」の認証も取得しています。

 目標達成に向けて、企業活動からの直接的なCO2排出量(スコープ1)と間接的CO2排出量(スコープ2)について、NRIグループの温室効果ガス排出量を30年度に72%削減(13年比)します。50年度までに、事業で使用する全ての電力を再生可能エネルギーで調達し、温室効果ガス排出量をゼロにすることも目指しています。こうした環境対応はどの企業でも社会的責任(CSR)の一環として取り組んでいますが、当社はコンサルティング企業でありITサービス事業者なので、当社自身だけでなく、顧客向けにITサービスなどのソリューションも提供するというのが我々の考え方です。

 例えば16年には、国内の事業会社として初めて円建てグリーンボンドを発行し、横浜野村ビル(横浜市西区)の信託受益権の取得資金と設備投資資金に充当しました。

 環境対策で先行する欧州ではグリーンボンド発行額が既に数兆円規模と巨大になっていました。当社はいち早くグリーンボンドを発行することで、顧客を含む他社の参考になるモデル事例を作りました。その後も、資金使途に工夫を加え、「NRI サステナビリティ・リンク・ボンド」を21年3月に発行しました。目標達成の場合、金利優遇ではなく、期限前償還を享受できる世界初のスキームを採用しています。

データセンターをRE100に

具体的にはどのように取り組んでいくのでしょうか。

横山 当社が運営するデータセンターに関して説明しましょう。企業がインターネット・サービスを提供するため個別にサーバーを設置していくと、サーバー1台当たりの消費電力を合計したCO2排出量は膨大になります。複数企業のサービスを統合してデータセンターで運用すれば、CO2排出量は削減できます。当社はデータセンターで使用する電力を再生可能エネルギーで調達し、30年度には再エネ率70%を目指しています。当社のデータセンターを利用してもらうことで、顧客はCO2削減に貢献できるのです。

 当社のデータセンターの電力使用量は年間およそ10万MWhで、一般的な家庭2万世帯の消費電力に当たります。省電力化は進んでいるとはいえ、顧客の需要が上回っているので、CO2排出削減の観点からRE100にしていく意味は大きい。

 当社が開発したシステムを複数の顧客に提供する「共同利用型サービス」でも、使用電力を再生可能エネルギー由来に移行します。こうした共同利用型サービスは証券会社や投資信託など金融機関が多く利用しています。当社がRE100を達成すれば、顧客もサプライチェーン排出量の算定で、「その他の間接排出量」(スコープ3)カテゴリー1「購入した物品・サービス」のCO2排出削減をうたえるのです。

 これを実現するには、データセンター事業で本当にRE100を達成しなければいけない。再生可能エネルギー調達を電力事業者頼みにしないためには、将来は水力発電所や風力発電事業者を買収したりすることも考える必要があるかもしれません。