21年3月に1000億円の自社株買いを発表しました。株式市場も反応して非常にインパクトがありました。

山下 20年、第19次中計の総括で、最大1000億円の株主還元を実施すると発表していました。ところが、20年3月期決算を発表した5月はコロナ禍のまっただ中でした。財務体質に不安はないものの、何が起きるかわからないので、手元資金の流動性を高めておこうと少し時間をいただきました。第20次中計が見えてきた段階で、「約束したことは実行しよう」と決断し、ほぼ同時の発表となりました。

 今回の中計では、最適な資本構成や資本配分についての考え方をきちんと示すことも重視しました。売り上げや利益に注目が集まりがちですが、持続可能性の面から言うと、バランスシートが健全で資本構成が狙った通りに推移することが重要です。これだけ金利が安い中で、どのように負債を活用するかは大切なテーマです。今まで十分ではなかった資本政策の説明ができたので、一歩踏み込めたと思っています。

社内でバランスシートやリターンを重視しようという意識は高まっていますか。

山下 3年前に経営会議の諮問委員会として、投資委員会を立ち上げました。資本家の立場で、収益性やリスクなどの点から正しい投資か否かを検証しています。このような取り組みによって経営幹部には、投資とリターンで判断する習慣がついてきたと思います。

 社員への理解を深めるのはこれからです。先日も全社員向けに日本語と英語で、ROICやROE(自己資本利益率)の重要性についてメッセージを発信したところです。

取締役賞与をESG指標と連動

20年度から取締役の賞与を外部のESG評価と連動させています。

山下 そもそもリコーは、1998年に「環境保全と利益創出は同軸であるべき」と環境経営のコンセプトを打ち出すなど、ESGを積極的に推進するカルチャーがあります。現在、7つのマテリアリティを特定し、関連する17のESG目標を設定しています。私はこれらのESG目標を将来のビジネスにつなげるという意味で、「将来財務目標」として非常に重視しています。

■ 2025年に向けた中長期の将来財務(ESG)目標値
■ 2025年に向けた中長期の将来財務(ESG)目標値
出所:リコー
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 2、3年前からは、このESG目標の責任部門を設け、そこがチェックしながら活動を推進する体制を整えてきました。例えば「デジタル人材育成」の目標は、新設したデジタル戦略部がけん引する形としています。

 こうした仕組みが出来上がり、ようやくオペレーションが回り始めたので、20年から取締役の賞与算定式に「ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI)」の評価を組み込むことにしました。執行役員の賞与にもESG評価を連動させています。社内でESGの話題がよく出るようになるなど、経営とESGを連動させる意識が一層高まったと感じています。

そのDJSIで20年、リコーは「コンピューター・周辺機器/オフィス機器」セクターで第2位になりました。

山下 5年ぶりにDJSI「ワールドインデックス」の構成銘柄にも選定され、とてもうれしかったですね。DJSIのセクター第1位は米ヒューレット・パッカード・エンタープライズでした。その背中を追いつつ、1位に評価していただけるよう引き続き活動を進めます。

 そのほか、「日経SDGs経営大賞」を受賞するなど、多方面から評価していただく機会が増え、ありがたく思っています。賞をもらうことは目的ではありませんが、世の中が期待することに挑戦し、認めていただくのは社員の励みにもなります。日経SDGs経営大賞の授賞式の日には、スマートフォンで、「この賞は、努力してきた社員の皆さんへのご褒美だ」という内容のメッセージビデオを自撮りして、翌日にはイントラネットで発信しました。