中計では目標数字や事業だけでなく、社員の働き方や働きがいについても触れているのが印象的です。どんな思いがあるのでしょう。

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「ROICやROEも全社員に説明」(写真:村田 和聡)

山下 私は社長に就任した時から、「社員が生き生きと働いている会社にしたい」と強く思っていました。我々は、働いている人のそばで仕事をしてきた会社です。

 社員たちが生き生きと働いていなければ、誰もリコーから複写機を購入したり、オフィスサービスを利用したりしないでしょう。全社プロジェクトの1つに「働き方改革」を据え、社員主体の働きがい改革に取り組んでいます。

 社員が仕事をしやすくするためにはインフラ整備が必要だと、17年に全世界で「Microsoft 365」を導入しました。RPA (Robotic Process Automation)も積極的に活用し、1000テーマを超える業務プロセスをロボット化しています。既に3000人以上の社員がRPAを使いこなし、業務改善に取り組んでいます。

 こうして仕事を効率化すると、社員たちは少し時間に余裕ができます。すると上司は、他の仕事を入れたり、人員を減らしたりしたがります。私は「それはやめてくれ」と言って、19年から「社内副業制度」を導入しました。勤務時間の20%まで、社内でやってみたい仕事や活動にチャレンジできる制度です。

 社員たちの動きが活発になってきたところで、アクセラレータープログラムも開始しました。社内外の起業家チームがピッチコンテストで競い合い、勝ち抜いたチームには予算を取って100%好きなことができる体制をバックアップしています。このプログラムはかなり盛り上がっていますよ。すごく優秀で前向きな社員が多いと感じています。

 20年は、社員がやりたい仕事を書き込める「タレントパレット」という人材マネジメントシステムも導入しました。22年4月からはリコー式ジョブ型人事制度にも挑戦します。

 デジタルサービスの会社への変革には、個人の自律が必要です。個人がいかに変貌を遂げられるかが、リコーの行く末を決めます。人材にはこれまでも相当な投資をしてきましたし、これからも続けるつもりです。

研究開発のテーマは「五感」

リコーは36年に創立100周年を迎えます。どんな形で社会に貢献する会社でありたいですか。

山下 リコーはこれまで、オフィス業務プロセスの効率化、生産性向上のお手伝いを通して、お客様の「はたらく」に寄り添ってきました。今ある仕事はロボットやAI(人工知能)に置き換わっていきます。今後はお客様が創造力を発揮する支援をしたい。私は、「“はたらく”に歓びを」というビジョンを掲げています。仕事を通じて充足感、達成感を得ることをお手伝いできる会社になれば、次の100年も確実にお客様に寄り添えるはずです。

 それには2つの方向性があります。1つは今見えている様々な社会課題の解決を事業に仕上げることです。具体的には植物由来の新素材「PLAiR」やインクジェット技術を応用したリチウムイオン電池、社会インフラ向け点検サービスなどを手掛けます。

 もう1つの方向性は研究開発です。20年11月に「はたらく歓び」を研究する施設「3L」をオープンしました。研究開発のテーマとして考えているのが五感です。人間は情報の7~8割を目で捉えるといわれますが、喜びや幸せは音や匂い、皮膚感覚で捉えている可能性があります。生き生きと仕事をしている人は、達成感や充実感を五感でどう捉えているのか。そんな研究を進めていけば、さらに社会へのお役立ちができると思っています。