聞き手/安達 功(日経BP 総合研究所フェロー)

企業理念である「持続可能な社会の実現への貢献」に向け、中期経営計画2022を策定した。全従業員が企業理念を共有し、「自分ごと」として取り組むことがカーボンニュートラル実現への近道と考える。

2022年度を初年度とする5カ年の「大林グループ中期経営計画2022」を発表しました。策定に至った背景を教えてください。

蓮輪 賢治(はすわ・けんじ)
蓮輪 賢治(はすわ・けんじ)
大林組 代表取締役社長
1953年生まれ。大阪府出身。大阪大学工学部土木工学科卒業後、大林組入社。2010年執行役員、12年常務執行役員に就任。14年常務執行役員(テクノ事業創成本部長)、16年取締役専務執行役員(同)を経て、18年3月より現職(写真:吉澤 咲子)

蓮輪 賢治 氏(以下、敬称略) 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う人々の価値観・行動様式の変化や昨今のウクライナ情勢、加速する国内のカーボンニュートラルへの流れなど社会や経済は急激に変化しており、将来の予測が難しい不確実な時代を迎えています。

 一方、国内建設業界における事業環境は、10年度の建設投資約42兆円を底に、東日本大震災の復興需要が契機となり、景気の回復とともに建設投資が大幅に拡大し、17年度には60兆円を超える規模となりました。コロナ禍で一旦ブレーキはかかったものの今後は堅調に推移すると見込んでいます。加えて、建設投資の内容では、現在、建築ではデータセンターや物流施設など、土木では国土強靭化計画に伴うインフラリニューアルが増加の中心となっています。今後はその質が変化していくことが予測され、25年の大阪・関西万博を含む夢洲地域の開発をはじめ、スマートシティを軸とした新たな街づくりなど、カーボンニュートラルやウェルビーイングを実現する建設需要の拡大が見込まれます。

 このように社会や発注者のニーズが変容していく中で、いかに市場ニーズを先んじて捉え、課題解決につながる提案を行なえる組織能力を構築できるかが、当社の成長の鍵となります。こうした状況と当社の21年度の業績を踏まえ、今回、新たな中期経営計画を策定しました。

国内建設以外で稼げる企業へ

新しい中期経営計画では、経営課題をどう捉えていますか。

蓮輪 経営課題としては、「顧客への提案力と建設プロセスに係る生産能力を拡充し、建設事業の基盤を強化」「社会課題解決を新たなビジネス機会とするための技術とビジネスのイノベーション」「持続的成長のための事業ポートフォリオの拡充」の3点を挙げています。これらの課題にしっかりと取り組むことを基本戦略とし、新たな中期経営計画のテーマである「事業基盤の強化と変革の実践」を実現していきます。

 取り組みの推進に当たっては、22〜23年度を基盤強化のステージ、24〜26年度を変革実践のステージと位置付けています。まずは、23年度までの2年間で、国内を中心とした建設事業を強化することにより、連結営業利益1000億円をボトムラインとして、安定的に収益を創出できる事業基盤を構築します。

 24年度以降は営業利益の3割以上をグリーンエネルギー事業や開発事業、海外建設といった国内建設以外の事業で稼ぐことができる強靭な企業体質へと変革していきます。

非財務指標の目標については、どのように設定していますか。

蓮輪 環境面でいえば、CO₂排出量削減の目標として30年度までに19年度比で、スコープ1、2では46.2%削減、スコープ3では27.5%削減と設定しました。パリ協定と科学的根拠に基づく目標(SBT)にコミットし、50年までにカーボンニュートラル実現を目指します。

 ただ、当社にとって脱炭素への取り組みは、決して目新しいことではありません。企業理念として「持続可能な社会の実現への貢献」を掲げており、将来のあるべき姿からバックキャスティングの手法によって、11年に「Obayashi GreenVision2050」を策定し、再生可能エネルギー事業を行なうなど環境に配慮した社会づくりに取り組んできました。このグリーンビジョンをより発展させ、19年に「Obayashi Sustainability Vision2050」へと改訂し、今に至っています。これからも単に数値目標を達成するのではなく、全従業員が企業理念を共有し、「自分ごと」として取り組んでいくことがカーボンニュートラル実現への近道と考えています。