聞き手/安達 功(日経BP 総合研究所 フェロー)

サステナブル社会の実現とまちづくりで新たな価値を創造する。森林資源と地域経済の好循環を創出する「森林グランドサイクル」の構築を進める。

歴史ある建設会社というイメージがありますが、近年は「まちづくり総合エンジニアリング企業」などのキーワードを打ち出しています。

磯野 正智(いその・まさとも)
竹中工務店 執行役員 経営企画室長
1984年竹中工務店入社、2008年生産本部副部長、10年調達本部部長、15年名古屋支店副支店長、17年経営企画室室長、19年より現職(写真:大槻 純一)

磯野 グループ全体の事業領域を建築専業から、「まち」全体に拡大しています。「まちづくりの全てのステージ」で最良のソリューションを提供し、環境に優しいサステナブル社会の実現を目指しています。2021年3月、岐阜県高山市の奥飛驒温泉郷で地熱発電事業に参入しました。また、伝統的な建物を残しながらシェアオフィスとする事業など、新たな領域に少しずつ踏み出しています。

 きっかけは14年にスタートした「グループ成長戦略」です。その中で、20〜22年に「新たな事業領域にチャレンジし結果を出す」という目標を設定しました。それが現在の社会環境と自然にマッチしたと思っています。成長戦略の中で大命題として「社会課題解決に向けたまちづくり」を掲げています。

 われわれは1971年に「設計に緑を」とうたい、まちに緑のくさびを打ち込む活動を始めていました。92年に地球環境憲章を、2009年には環境方針を定め、「環境と調和する空間創造に努め、社会の持続的発展に貢献する」と宣言しました。

脱炭素社会への取り組みが加速しています。50年に向けたロードマップについてお聞かせください。

磯野 21年1月にTCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)の提言への賛同を表明して、同3月に50年カーボンニュートラル実現に向けてCO2削減長期目標を改定しました。これまで「50年に80%削減」としていた目標を、「50年までに100%削減」としました。そこからバックキャストして、「30年までに35%削減」を掲げました。

 セメントや鉄鋼などカーボンニュートラルな製品づくりに積極的に取り組まないと、日本は世界に後れをとってしまいます。これらの問題は一企業では資金的に難しく、国の政策支援が必要になると思っています。

「ライフサイクルCO2ゼロビル」に挑戦しています。具体的にはどんな内容ですか。

磯野 現在、推進する「ゼロエネルギービル」をさらに進化させ、50年に目指す姿が「ライフサイクルCO2ゼロビル」です。建設資材の製造や建設時、ビルの運用、解体廃棄時に発生するCO2までトータルでゼロにするものです。川上から川下まで、一貫した考えでカーボンニュートラルな取り組みを実践します。

森林資源と地域経済の好循環

木造・木質建築による脱炭素の取り組みと併せて、「森林グランドサイクル」について教えてください。

磯野 「森林グランドサイクル」は、森林資源と地域経済の持続的な好循環を創り出す取り組みです。成長戦略において、社会課題を解決しながら本業にも結びつけていきたいと考えた中に、森林の問題がありました。日本の山林の多くが放置されて荒れ果て、それが自然を壊しているという現実があります。その課題を解決できれば地方創生にも貢献できる。何より私たちが建物に木材を使えば環境に優しい建築になるし、植林をしてサイクルを回し続ければ持続可能な社会の実現につながります。

■竹中工務店のサステナブル社会に向けた取り組み
「森林資源と地域経済の持続的な好循環」を創り出す仕組み
(出所:竹中工務店)