聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

戸田建設が「RE100」「SBT」などに積極対応し、脱炭素への取り組みを加速している。自社に加え、顧客が新設するビルでもCO₂排出削減を促す仕組みづくりを進めている。

2021年12月に「サステナビリティビジョン2050」を定め、マテリアリティ(重要課題)の1つに「脱炭素社会の実現」を掲げました。

樋口 正一郎(ひぐち・しょういちろう)
樋口 正一郎(ひぐち・しょういちろう)
戸田建設 常務執行役員 イノベーション推進統轄部 統轄部長
1980年早稲田大学理工学部卒業後、戸田建設入社。2007年建築企画部長、11年環境事業推進室長、18年価値創造推進室副室長 兼 イノベーション推進センター長を経て、22年より現職(写真:髙田 浩行)

樋口 正一郎 氏(以下、敬称略) 戸田建設は1994年に「戸田地球環境憲章」を定め、ゼネコンの中でいち早く環境リスク低減活動を進めてきました。2010年には「エコ・ファースト企業」に認定され、11年に竣工した「戸田ビルディング青山」は、エネルギー消費量とCO₂排出量を一般的なオフィスビルに比べ40%削減できた環境配慮型建築として高評価を得ました。16年には長崎県五島列島沖で浮体式洋上風力発電所を国内で初めて商用運転するなど、先進的に取り組んできたと自負しています。

 太陽光発電施設なども所有しており、17年からは再生可能エネルギーを中心としたビジネスにも乗り出しました。この頃から環境活動はビジネスに直結するとの認識が社内に定着しました。19年に再エネ活用促進の国際的枠組み「RE100」に加盟し、「中期経営計画2024」では役員の業績連動型報酬に非財務連動係数も加味しています。具体的には、CO₂排出量の前年比率により役員の報酬が増減します。

21年11月に電力販売サービス「とだ電気」を始めました。とだ電気はRE100にどう関わりますか。

樋口 当社は事業所や工事現場で使う電力を順次、再エネ電力に切り替えています。当初はRE100化を進めると、「電力料金が高くなりかねない」と慎重論もありましたが、当時社長だった今井雅則・現会長が「それでもやろう」と決断しました。

 再エネ電力に切り替えてみると、その当時は環境価値を付加しても電力料金は上がりませんでした。工事現場で収支を管理する各地の所長からの同意も得て、本社ビルなども含めて再エネ電力を活用し始めました。

 とだ電気は当社の工事現場にRE100の電力を供給し、さらに工事が終わりお客様に建築物を引き渡した後にも、ビルで使われる電力を引き続きRE100に適合する再エネで使っていただく仕組みです。当社は17年8月に国際認定「科学に基づく温室効果ガス削減目標(SBT)」を取得しました。

 工事現場で動かす建設機械・重機は軽油の使用が避けられず、そこからCO₂排出をいかに抑えるかが課題です。22年にSBTの達成目標が(気温上昇を)2℃から1.5℃へと抑える、より厳しい基準に修正されました。実現するためにはRE100で電力によるCO₂排出量のゼロ化が必要不可欠です。