聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

多摩田園都市開発や渋谷再開発など首都圏で地域密着のまちづくりを展開する。2030年に向けた企業ビジョン「VISION2030」でカーボンゼロ、廃棄物ゼロに挑戦する。

2030年に向けた企業ビジョン「VISION2030」の策定経緯を聞かせてください。

寺田 光宏(てらだ・みつひろ)
東急建設 代表取締役社長
1957年静岡県生まれ。79年徳島大学工学部建設工学科(土木専攻)卒業、同年東急建設入社。2010年執行役員鉄道事業部長、12年取締役常務執行役員土木総本部長、16年取締役専務執行役員土木本部長、18年代表取締役副社長執行役員就任、19年より現職。東京・渋谷の本社屋上にて撮影(写真:中島 正之)

寺田 光宏 氏(以下、敬称略) 東急建設では、企業理念の具現化を目指し、2000年から10年ごとにビジョンを策定しています。前回、10年の「VISION2020」では建設本業の「深化」と新しい事業領域挑戦の「進化」の2つで、真の価値あるゼネコンを目指そうと考えました。東京都心である渋谷スクランブルスクエアの建設といった難工事を成功させ、本業は深化することができましたが、新領域への挑戦では少し物足りなさが残りました。そこで、VISION2030では「ゼロへ挑み、ゼロから挑戦」として、新たな挑戦を強く打ち出しました。

創業から75年の歴史がある中で、あえて「ゼロ」とした理由は何ですか。

寺田 「ゼロへ挑み」ではカーボンゼロと廃棄物ゼロ、「ゼロから挑み」では新領域への挑戦による持続可能な社会への貢献と企業価値向上を図るという思いを込めました。「歴史もあるのに、ゼロからか」という意見もありましたが、将来に向けた踏み出しと考え、ゼロからとしたのです。

社内での議論はどうだったのでしょうか。

寺田 社長である私から若手社員まで約50人で構成するプロジェクトチームでの約5カ月にわたる議論に加え、社外取締役との対話やシナリオプランニングなどから得た知識を反映させています。社内からはカーボンゼロは明確で分かりやすいという意見や、新規事業も新たなスタートということで、インパクトがあるという声が上がっています。

一貫して社会課題解決に挑戦

VISION2030を作るにあたり、75年に及ぶ歴史のどんな点を意識されたのでしょうか。

寺田 1946年に東京急行電鉄内に臨時戦後復興委員会が設立され、それをきっかけに当社の前身となる東京建設工業が生まれました。東急電鉄自身が渋沢栄一創立の会社で、社会課題解決を非常に重視していました。その後、高度経済成長期には東京都への人口集中が大きな問題になると予測、東京と神奈川県において多摩田園都市構想を東急グループ全体で推進しました。その中で、東急建設は住宅地の9割近くを造成するとともに、交通インフラの主要部分の整備を担いました。その意味で、一貫して社会課題の解決に挑戦する歴史を持ちます。