聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

森林の生産性向上により、原材料のコスト低減と、CO2固定量の増大を図る。同時にバイオマス製品を開発・普及させカーボンニュートラルな社会を目指す。

森林資源の価値と日本製紙グループのビジネスモデルについてお聞かせください。

瀬邊 明(せべ・あきら)
日本製紙 執行役員 原材料本部長
1965年生まれ。88年十條製紙入社。2014年日本製紙 原材料本部林材部長、18年同社参与 原材料本部長兼林材部長などを経て、20年6月より現職(写真:大槻 純一)

瀬邊 明 氏(以下、敬称略) カーボンニュートラルが大きな課題になり、改めて樹木の光合成による炭素の吸収・固定機能について考えてみると、その仕組みは「神様が準備してくれた」と思うほど優れたシステムと言えます。そうした木材を原材料に使ってものづくりができるのは恵まれており、ますます活用する意義のある自然資本だと思っています。

 当社グループのビジネスモデルは3つの循環から成り立っています。1つ目は「持続可能な森林資源」で、森林の植栽・保育・伐採にあたるところです。2つ目は伐採した木材を用いた多様な「バイオマス製品の開発・普及」です。そして、3つ目が「製品のリサイクル」です。森林資源を基盤として炭素循環を繰り返していくことがカーボンニュートラル社会に貢献することだと考えています。

 3つの循環に加えてプラスアルファでやらなければいけないのは脱化石エネルギーです。製品の生産過程で化石エネルギーを使ってCO2を排出していますので、それをいかに減らすかが課題となります。「化石エネルギーからの転換」をしっかりやっていこうと考えています。

「森林とバイオマス製品のCO2固定」が取り組みの柱の1つになっています。CO2固定について具体的に教えてください。

瀬邊 当社が貢献できることは2つあります。森林でのCO2固定量をどれだけ増やすかと、バイオマス製品を世の中に送り出していかにCO2を固定し続けるかです。

 保有する森林は国内に約9万ha、海外に約7万8000haあります。合計16万8000haの森林が固定するCO2量は3100万tになります。これは常に固定されている量です。このうち伐採により年間300万tのCO2が排出されますが、持続可能な森林経営により新たに育った樹木で同じ量のCO2が固定され、カーボンニュートラルな状態が保たれています。

森林の生産性向上に取り組んでいますね。

瀬邊 生産性を高めて木材を調達したいという動機で25年ほど前から取り組んできました。同じ森林面積でも、木が早く育てば効率的に原材料を確保でき、コストが削減できるほか、その土地で固定できるCO2量も多くなります。

 2006年に買収したブラジルのAMCEL社ではユーカリの生産性が2倍に高まりました。ユーカリはパルプを作るための原料として使われます。当社はユーカリのDNA配列から早く育つ木を選抜する技術、大量増殖させるための挿し木技術を開発し、これまで12年かかっていた選抜期間を5年に短縮しました。