聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)
総合アルミニウムメーカーとして国内外に生産拠点を持ち、グローバルに事業を展開する。世界的にも意識が高まる「人権尊重」の基本方針を打ち出し、持続可能な社会を目指す。
2022年3月に「UACJグループ人権基本方針」を開示しました。方針策定の背景を教えてください。

1981年住友軽金属工業入社。同社執行役員・生産本部副本部長を経て、2013年UACJ執行役員・生産本部名古屋製造所長などを歴任。18年6月より現職(写真:吉澤 咲子)
石原 美幸 氏(以下、敬称略) 国連ビジネスと人権に関する指導原則、国連グローバル・コンパクト、世界人権宣言をはじめとする国際規範を支持しています。一方で、グループ企業理念の価値観の1つとして「相互の理解と尊重」を掲げ、人権を尊重した事業活動を行なっています。そうした中、21年度には、アルミニウムのサプライチェーン全体におけるサステナビリティへの取り組み向上とESGへの貢献を目的とする国際イニシアチブ(ASI)の認証を業界に先駆けて取得しました。
本認証取得の過程で当社に関わる全ての人の権利を尊重することが不可欠となり、改めて人権尊重の姿勢と取り組みを整理し、企業活動のよりどころとして人権基本方針を定めました。当社は世界12カ国40カ所に海外拠点を有するため、各国・地域の法令を順守し、宗教や習慣、文化、伝統を尊重するなど取り組みを強化していきます。
21年5月に発表したサステナビリティの基本方針でも、6つのマテリアリティ(重要課題)の1つに「人権への配慮」を掲げています。
石原 国内外で経営層と従業員が参加するワークショップを開催し、マテリアリティを特定しましたが、海外の従業員から第一に挙がったのが「人権への配慮」です。「素材の力を引き出す技術で、持続可能で豊かな社会の実現に貢献する」という当社の企業理念を実現していく上で、グローバルな事業展開での課題になると考え、項目の1つとしました。
目標として、まず事業活動に伴う人権侵害リスクを把握し予防策を講じる人権デューデリジェンスの実施と目標作り、アクションプランの実行を設定し、21年度は福井県とタイの製造所で実施しました。30年度までには国内外の主要事業所で実施します。
もう1つは、行動規範、人権、ハラスメント関連の研修実施率で、30年度までに100%を目指します。