聞き手/杉山 俊幸(日経BP 総合研究所主席研究員)

新中期経営計画を策定し、次の成長をけん引する事業「10のGrowth Gears(GG10)」に注力する。データ基盤の活用で商品ごとのカーボンフットプリント(CFP)を取引先に開示する。

新たに策定した「新中期経営計画2024~Be a Trailblazer~」の概要を教えてください。

工藤 幸四郎(くどう・こうしろう)
工藤 幸四郎(くどう・こうしろう)
旭化成 代表取締役社長 兼 社長執行役員
1982年慶應義塾大学法学部卒業後、旭化成工業(現旭化成)入社。2008年に旭化成せんい ロイカ事業部長、13年執行役員、16年旭化成上席執行役員、19年常務執行役員、21年取締役 兼 常務執行役員、22年4月より現職(写真:高田 浩行)

工藤 幸四郎 氏(以下、敬称略) 2022年に創業100周年を迎えました。これまでの歴史を踏まえ、次の100年に向けた一歩をどう進めるかを示す中計としました。サブタイトルは「Be a Trailblazer(先駆者)」です。先輩方の頑張りで売上高2兆円超の企業になり、従業員は安定志向になっているように感じていますが、もとはチャレンジ精神旺盛な気風から「野武士集団」とも称されていました。この中計では原点に戻り、先頭に立って果敢に挑戦していくという思いを込めました。

 目指すのは持続可能な社会への貢献と、持続的な企業価値向上という2つのサステナビリティの循環です。

「10のGrowth Gears(GG10)」を主力事業と定めて2030年頃に営業利益の7割超を占めることが目標です。

工藤 19~20年度はコロナ禍や米中貿易摩擦の影響を受け、汎用製品の業績が低迷しました。事業売却も含めた戦略の再構築を行ない、同時に将来の成長をけん引する事業に重点的にリソースを投入します。

 GG10の一例が、脱炭素社会に向けて重要性が増す水素関連事業です。水素のサプライチェーン(供給網)において、当社の強みは水電解の技術とノウハウです。様々な企業と戦略的なアライアンスを組むため、既に一部のパートナーとの協議をスタートしています。「スピード」「アセットライト」「高付加価値」を意識して事業を推進します。

DXで温室効果ガス排出量を開示

脱炭素化で注目される電池では主要部材のセパレータが強みです。どのように価値向上を図りますか。

工藤 独自技術の湿式膜のセパレータを製造販売してきましたが、買収によって乾式膜も手に入れました。両方を持つ意義は大きいと思います。

 湿式膜はスマートフォンや電気自動車(EV)の電池に採用され、極めて順調に成長してきました。乾式膜は計画よりやや事業拡大が遅れていましたが、ここにきて中国でエネルギー貯蔵システム(ESS)用の引き合いがぐっと強まっています。21年、上海エナジーと設立した合弁会社では当初計画よりも投資を早め、生産量を増やす検討を進めています。

 欧州連合(EU)は27年から、基準より温室効果ガス排出量が多い電池の輸入を禁じる方向です。自社生産のセパレータについては、再生可能エネルギーの利用や生産性の向上などで同排出量の削減に努めます。また当社が開発した、CO₂を用いてリチウムイオン電池用の電解液原料を作る技術を、欧州や中国のメーカーにライセンス供与し、電池全体のサステナブル化にも貢献します。