あえて高い環境目標を設定

「中期環境目標2030」も設定しました。狙いを聞かせてください。

上野 環境問題が深刻化する中、企業は主導的に解決策を打ち出す必要があります。従来、中外製薬は5年ごとに目標を設定していましたが、社会課題解決のロールモデルを目指すという立場から、あえて長期を見据えて高い目標を掲げました。

 気候変動対策、循環型資源利用、生物多様性保全の領域で18項目のKPIを策定しています。目標へのロードマップが描けていない項目もありますが、設備メーカーなどと連携して解決策を見いだしていきます。

大株主のロシュとはどのように協働していくのでしょうか。

上野 ロシュとの戦略的アライアンスは、「TOP I 2030」をはじめとする戦略の基盤です。安定した収益基盤の下、私たちはイノベーションの創出に集中し、成果物である製品をロシュの販売網によってグローバルに販売します。それによってロシュの成長も牽引できます。両者はWin-Winの関係であり、今後もこのモデルを継続していく考えです。

 一方、わが社が自主独立経営を継続する上で、少数株主も重要な存在です。彼らの利益の尊重、平等性の確保にも目を配っています。特に重視しているのが対話です。個人や海外投資家向けの説明会を積極的に開催するほか、情報発信手段として統合報告書にも力を入れています。

統合報告書は外部から高い評価を得ています。ポイントは何ですか。

上野 数字として表れる事業活動の背景にある、思いやこだわりを伝えるように意識しています。情報を開示して終わりというのではなく、事業活動に興味を持ち、理解していただくためのストーリーとして発信することを心がけています。

ダイバーシティマネジメントへの取り組みを教えてください。

上野 人財は企業価値の源泉です。イノベーションの創出には、様々な経験や価値観を持つ多様な人財が切磋琢磨できる環境をつくることが不可欠です。ジェンダーについては、10年からワーキングチームをつくって推進してきました。中外製薬(単体の在籍者ベース)の女性管理職の比率は20年度が14.6%でした。23年度は17%を目指します。

ESG経営を進化させるポイントは何ですか。

上野 「TOP I 2030」で示した通り、私たちはESGを企業価値向上に不可欠な要素と捉え、経営のメインに据えています。ESG経営を進化させる上で重要なのは、時代とともに変化する社会の期待や要請に的確に対応することです。常に自分たちの立ち位置とのギャップを把握し、修正するPDCAサイクルを回していくことが必要です。

 そのための基準として、世界の代表的なESG投資指数である「Dow Jones Sustainability Indices(DJSI)」など外部評価も重視しています。20年は初めて「DJSI World」の構成銘柄に選定されました。今後も社会の変化を見据えながら様々な期待や要請に応え、「世の中になくてはならない会社」であり続けたいと考えています。