聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

グローバル基準でESG経営に取り組み、あらゆる改革を続けていく。企業のパーパスである「おいしさと笑顔を地域の皆さまに」の実現に挑む。

コロナ禍でも業績は好調です。この要因をどのように分析していますか。

日色 保(ひいろ・たもつ)
日本マクドナルドホールディングス 代表取締役社長兼CEO
1965年愛知県生まれ。88年静岡大学人文学部卒業後、ジョンソン・エンド・ジョンソン入社。2012年同社代表取締役社長就任。18年日本マクドナルド上席執行役員チーフ・サポート・オフィサー、19年3月代表取締役社長兼CEO、21年3月日本マクドナルドホールディングス代表取締役社長兼CEO就任(写真:中島 正之)

日色 保 氏(以下、敬称略) もともと進めてきたドライブスルーやテイクアウト、モバイルオーダーといった、お客様にとって利便性の高いサービスの提供に力を入れてきたところに、コロナ禍で購買行動が変化したことが要因です。

 社会的に不安定な状況下で、普段から親しんでいてなじみがあり、安心感がある商品やブランドという点で支持された面もあるでしょう。

 当社には「クルー」と呼ぶ17万人のアルバイト・スタッフがいます。新型コロナウイルス感染症の拡大で、数日先のことも予測できないような状況下で、現場の彼らが頑張ってくれたことはとても大きいです。

リスク管理の観点からはどのように取り組みましたか。

日色 当社は国内に2900店舗以上のレストランがあり、新しい取り組みの際には一斉に変える必要があります。

 2020年3月に各部門から20人程度を集めた組織横断型の危機管理チームを作り、毎日ミーティングをして意思決定しました。例えば20年4月に緊急事態宣言が出る前から需要が増えて、店内が密な状態になっていました。そこで一部の店舗では行政側から要請される前に、店内の飲食利用は止めてドライブスルーやテイクアウト、デリバリーのみで対応することにしました。

顧客に店舗体験を届ける責任

日本第1号店のオープンから21年で50周年を迎えました。ESGを企業経営の中でどのように位置づけて取り組んできましたか。

日色 当社のグローバルなパーパス(企業としての存在意義)は「おいしさと笑顔を地域の皆さまに」と定めています。レストランとして安心・安全なおいしい食事をお届けする責任を果たすだけでなく、クルーの笑顔を届け、お客様にも笑顔になってもらうという店舗体験を提供しています。

 実はマクドナルドはとても地域密着型のビジネスです。それぞれの地域には常連のお客様がいて、地元の店舗で働くクルーがいます。食事の提供に加えて地域貢献で笑顔になってもらい、グローバルレベルで持続可能性の面で責任を果たすのが創業以来の理念です。何をしていけばお客様や地域の方に喜んでもらえるか、責任を果たせるのかを考えて事業を続けてきました。

 世界中に店舗があるグローバルカンパニーとして、マクドナルドは世界的な基準でESGに取り組んでいます。例えば、14年8月に全店舗を一斉に禁煙にしました。直後は喫煙者の来店が減って売り上げは下がりましたが、健康に配慮するというグローバルな潮流の中でファミリー層のお客様に快適な店舗体験をしてもらうために、他の企業より早い時期に全面禁煙に踏み切りました。