聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

マテリアリティの特定から、リスクと収益機会を明確化、資本効率重視経営を強化する。脱自前主義でパートナーシップを形成し、新しいビジネスモデルを創出する。

2020年の小林敬一社長へのインタビューで、「古河電工グループ ビジョン2030」についてお話をうかがいました。その後、マテリアリティを特定されるなどの進展が見られます。

宮本 聡(みやもと・さとし)
古河電気工業 取締役 兼 執行役員常務 ビジネス基盤変革本部長
1962年東京生まれ。84年東京大学法学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。2016年経済産業省中小企業庁長官、17年同省退官。同年古河電気工業顧問、18年執行役員、総務・CSR本部長、19年取締役兼執行役員常務、総務・CSR本部長を経て21年より現職(写真:村田 和聡)

宮本 聡 氏(以下、敬称略) 古河電工の基本理念に「真に豊かで持続可能な社会の実現」という言葉があります。これはSDGsやESGの考え方と共通するものです。

 ビジョンを実現するために、マテリアリティの特定は基本です。そのためにESG評価機関、SDGsの169のターゲット、ビジョンの項目などをすべて洗い出しました。そこから29項目を選び、社会や投資家からの期待値を考慮して、「3つの収益機会」と「3つのリスク」を特定しました。

 収益機会の大きな柱は社会課題解決型事業の創出です。これは次世代インフラを支える事業と環境配慮事業で構成されます。一方、「3つのリスク」のうちの1つが、気候変動に配慮した事業活動です。地球環境問題は、収益機会とリスクの両面で重要だと認識しています。

環境調和製品の比率を増やす

気候変動への取り組み、その後の「環境ビジョン2050」策定について教えてください。

宮本 CO2排出削減の肝となるのが、再生可能エネルギーの利用です。当社グループは太陽光発電設備を国内に2拠点、海外に3拠点導入しており、国内には水力発電設備も持ちます。再エネ比率は国内18.5%、国内・海外合計11%で、日本企業としては高い水準です。

 最近はバリューチェーン全体のCO2排出削減にも力を入れています。例えば、当社グループのアルミワイヤハーネスでは、材料・製造工程で再生可能エネルギーを用い、また使用段階ではアルミが軽量であるためCO2排出削減に貢献できます。同様の考え方で環境調和製品を社内で認定し、その比率を増やす施策も進行中です。

 温室効果ガス排出量は、30年度に17年度比26%以上削減を達成できる見通しです。21年3月に策定した「環境ビジョン2050」では、「2050年ゼロ」をチャレンジ目標に掲げました。

 20年1月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同したのは、これらの取り組みの体系化に有効だと考えたからです。社長を委員長とするCSR・リスクマネジメント委員会でリスク管理やガバナンスなどを議論して、取締役会へ報告する。こうした社内の管理体制により、TCFD提言にそった取り組みを行っています。

 20年度には、国際的な環境NGOのCDPから「気候変動Aリスト」企業に初めて認定されました。