聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

2021年7月末に「サステナビリティ報告書2021」を公表、「パーパス」実現へ中長期目標を打ち出した。中長期目標の柱は、30年までのCO2排出量50%削減(13年比)と農林水産業者の所得増加にある。

2021年7月末の「サステナビリティ報告書2021」で、改めて農林中央金庫ならではのサステナブル経営の実践を打ち出されました。

奥 和登(おく・かずと)
農林中央金庫 代表理事理事長 兼 執行役員
1983年東京大学農学部卒業、農林中央金庫入庫。2003年総合企画部副部長、04年総合企画部企画開発室長兼副部長、07年JAバンク統括部長、09年総合企画部長。11年常務理事、13年専務理事、17年代表理事専務。18年代表理事理事長、21年4月より現職(写真:大槻 純一)

奥 和登 氏(以下、敬称略) その背景には3つほどファクターがあります。1つは台風や洪水など自然災害による被害が多く、私たちの事業基盤である農林水産業がダメージを受けていることです。それも年々ひどくなっています。2つ目は、コロナ禍でいろいろな教訓を得たわけですが、金融機関としてのレジリエンス(強靭(きょうじん)性)と農林水産業としてのレジリエンスの双方の重要性を強く認識しました。3つ目は不確実性に対するリスクをどう考えるかです。金融庁も金融機関に対するガイダンスを強めています。

 こうしたファクターがある中で今回、「パーパス(存在意義)」や中長期目標について議論しました。

 議論のプロセスとしては、まず環境・社会問題のメガトレンドを踏まえて50年の「未来シナリオ」を共有しました。それに対してパーパスを議論し、さらに30年に達成すべきゴールとして中長期目標を議論するといったバックキャスティングの手法をとりました。

今回、職員の間での議論やステークホルダーの意見を踏まえ、パーパスを定めたそうですね。

気候変動をはじめとする環境・社会問題の深刻化、コロナ禍による働き方の変化など、農林水産業を取り巻く環境は急速に変化しています。そのような時期だからこそ、当金庫は何のために社会に存在するのか、改めて見つめ直すことにしました。

 農林中金にはこれまで「持てるすべてを『いのち』に向けて。」というコーポレートブランドがありました。自分たちのWhyやWhatをより分かりやすくつくることを議論し、表現したのがパーパスで、以下のフレーズです。

 「持てるすべてを『いのち』に向けて。〜ステークホルダーのみなさまとともに、農林水産業をはぐくみ、豊かな食とくらしの未来をつくり、持続可能な地球環境に貢献していきます〜」

■ 農林中央金庫のパーパス(存在意義)を策定
出所:農林中央金庫
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「いのち」という言葉には農林中金の独自性を感じます。

自然や豊かな環境あっての私たちです。「人のいのち」「生物(食べ物)のいのち」「星(地球)のいのち」が直線的に結び付いた状態を「いのちの連鎖」として、地球環境問題までストレートに考えられるように定義しました。人、生物、地球のいのちはまさに一体不可分のものなんですね。