バリューチェーンを強化

農林中金はこれまで組織として堅実であったと思いますが、そこにレジリエンスを内包させ、より柔軟性のある組織を目指すわけですね。

農林水産業の現場は少子高齢化が進み、後継者不足という問題も抱えています。このため農林水産業自体の持続性やレジリエンスに黄色信号が灯っていたということです。

 どうしたらこのダウントレンドを少しでも抑止することができるか。できることならアップする方向に持っていきたい。それがコロナ禍以前からの課題でした。

バリューチェーンのレジリエンス強化も新たな課題として浮き彫りになったと指摘しています。

バリューチェーン全体を俯瞰(ふかん)してビジネスを行うのはある意味当たり前のことですが、農林水産業ではどちらかというとつくることに専念し、その先の意識が薄かったように思います。よく農林水産業(川上)は10兆円規模だと言われますが、川中から川下までの食品産業は90兆円、川上から川下まで含めれば全体で100兆円以上になります。

 ですので、消費者にお届けしてこそつくる側の社会価値があるという意識をもっとしっかり持ちたいと思い、バリューチェーンのレジリエンス強化という課題を置いています。

 国内の人口が減少して「日本人の胃袋」自体が小さくなる中で、つくることのみに専念していてはだめです。輸出を含めて大きなマーケットを考えながら、どうやって商品に付加価値を付けていくかを考えていかなければなりません。

パーパスと中長期目標を策定するにあたり、理事長以下全役員によるワークショップを月1回開催したそうですね。

トップマネジメントの議論のほかに、中間管理職や職員のところまで議論が下りていったときに本当の意味があると思っています。ワイワイガヤガヤと話し合う「ワイガヤ」ならぬ「サスガヤ」(サステナビリティについて議論)、「ロンサス」(ロンドンでの議論)、「グンサス」(群馬県での議論)といった取り組みが広がりつつあり、楽しみに思っています。さらにビジネスコンテストなどにつながっていったり、情報が横に広がったりしていけば面白い。今はそんな取り組みの積み上げ時期かと思っています。

■ サステナビリティについての基本認識としての「いのちの連鎖」
■ サステナビリティについての基本認識としての「いのちの連鎖」
出所:農林中央金庫
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環境は事業基盤そのもの

中長期目標について伺います。気候変動問題により強く取り組むお考えですか。

それは私たちの事業基盤にとって相当なリスクファクターになっていますから、やって当たり前という感じがしています。環境は私たちの事業基盤が成立するための必要不可欠な条件ですので、CO2削減はチャレンジでもしっかり取り組んでいこうと思っています。

 具体的な目標としては、温室効果ガス(GHG)排出量削減について、当金庫投融資先および当金庫拠点とも30年までに50%削減(13年比)としています。

 そして特徴的なのはCO2吸収です。森林のCO2吸収、海洋のCO2吸収のメカニズムがありますので、生態系を大切にしていけばCO2削減に貢献できます。海の中でワカメなどが育てば水産資源が豊かになり、漁獲量の増加につながることもイメージできます。林業についても、山にもっと手を入れて生業(なりわい)が成り立つように林業経営を進めていけば、土砂崩れなどの災害を防ぐことにもつながる。CO2吸収源として森林をもっときちんと位置付けられれば、いろんな派生効果が出てくるはずです。

 農林中金としては林業と水産業で会員と一体になったCO2吸収の取り組みを進めていきたいと思います。もちろん農業でもCO2吸収の側面がありますので、いろんなことを考えていかなければいけません。

サステナブル・ファイナンスでも農林中金らしさが求められると思いますが、どんな方向性を考えていらっしゃいますか。

サステナブル・ファイナンスについては30年までに新規実行額10兆円を目標としています。

 足元の実行残高はまだ国外が多く、プロジェクトファイナンス、再生エネルギーファイナンスについても、国内の農林水産業とはまだ距離があります。ですが、CO2削減ということで考えれば、それはクロスボーダーの話ですのでどこでやろうがつながっています。もちろんそれに甘んじるというわけではなく、国内での取り組みを今後本格化させていきたいと思っています。