聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

患者の人生を変え得る医薬品を広く提供するため、研究開発や医薬品のアクセスの改善に力を注ぐ。創業240年。「誠実:公正・正直・不屈」という創業来の精神で、「モラルの高い会社」として成長を期す。

新型コロナウイルス感染症が拡大する中、武田薬品工業のパーパス(企業の存在意義)はどんな意味を持つようになりましたか。

クリストフ・ウェバー
武田薬品工業 代表取締役社長兼CEO
1966年、フランス・ストラスブール生まれ。92年仏リヨン第1大学薬学博士取得。93年英グラクソ・スミスクライン(GSK)入社。2003年GSKフランス会長兼CEO、08年GSKアジア太平洋地域担当上級副社長兼ディレクター、12年GSKワクチン社社長兼GMなどを経て、14年6月から武田薬品工業社長、15年4月からCEO兼務(写真:村田 和聡)

クリストフ・ウェバー 氏(以下、敬称略) 今回の危機は、「世界中の人々の健康と、輝かしい未来に貢献する」という当社のパーパスの重要性を一層明確なものとしました。武田は世界中の患者さんに人生を根本から変え得る革新的な医薬品を提供することを目指しています。

 その実現のため、研究開発を推進し、医薬品へのアクセスを改善することに集中しています。従業員のウェルビーイングにも焦点を当て、働きやすい環境作りをしています。

統合が完了した2021年は変曲点

2021年を変曲点と位置づけています。理由を教えてください。

ウェバー アイルランドの製薬大手シャイアーとの統合には2年を要しましたが、新たに加わった2万5000人の従業員がモチベーション高く仕事に取り組むための組織づくりができました。負債削減のための大規模な事業売却も果たし、今ではコストシナジーも生まれています。ここからはビジネスの成長に集中できます。21年は既に4件の新薬を申請済みで、さらに2件の申請を予定しています。新しい段階に入ったという意味で変曲点と言えます。

研究開発はどう推進しますか。

ウェバー 5000億円以上の研究開発費を投じ、オンコロジー(がん)、希少遺伝子疾患・血液疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、消化器系疾患の4つの領域で革新的な医薬品の創出に力を注いでいます。

 湘南研究所を開放し設立した「湘南ヘルスイノベーションパーク」には100社近くの企業が集結し、エコシステムを形成しています。イノベーションを創出するため、山中伸弥教授が所長を務める京都大学iPS細胞研究所やオンコロジー分野のスタートアップであるノイルイミューン・バイオテックなど、多様な企業・組織と提携しています。 

 パイプライン(新薬候補)には40の新規候補物質(NMEs)が並びます。将来の成長のため、常に新製品を生み出せる研究開発体制を構築できたと確信しています。