聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

2030年のあるべき姿からバックキャスト(逆算)して施策を考え、事業ポートフォリオ再編を進める。コロナ禍で大きく変わる不動産業界で、事業領域と顧客層の広さを武器に変革に挑む。

2030年に向けた長期ビジョンで「WE ARE GREEN」をうたい、「価値を創造し続ける企業グループ」を目指すとしています。

西川 弘典(にしかわ・ひろのり)
東急不動産ホールディングス 代表取締役社長 社長執行役員
1982年慶應義塾大学経済学部卒業後、東急不動産入社。2004年リゾート事業本部 資産企画部 統括部長、10年執行役員 総務部 統括部長、16年東急不動産ホールディングス取締役専務執行役員 一般管理管掌、19年東急不動産代表取締役 上級執行役員 副社長、20年より現職(写真:村田 和聡)

西川 弘典 氏(以下、敬称略) 長期ビジョンの策定では、会社の方向性や考え方を分かりやすく伝える言葉として「WE ARE GREEN」を採用しました。当社のコーポレートカラーが緑色で、環境経営を打ち出す上で「グリーン」が環境を象徴する色ということもあり、社員や事業会社が一丸となって目指す姿勢を表現しました。

 長期ビジョンを策定したのは、20年を最終年度とする中期経営計画が終わった時期です。20年度はコロナ禍の影響もあり、残念ながら財務目標は達成できませんでした。

 しかし、社会構造が大きく変わる中で、社員が目先の利益ばかりを追うようではいけません。アフターコロナを見据えて、会社としてどう成長していくべきか、どのような企業になるべきか。10年後のあるべき姿を想定して、そこから逆算して施策を実施するバックキャスト方式を取り入れました。

バックキャスト方式で将来を展望した際に、見えてきたものはありますか。

西川 もともと予想されていたデジタル化などはコロナ禍で急速に進みましたが、バックキャスト方式で考えたおかげで、今起きている変化を冷静に捉えることができました。

 当社は1998年に環境ビジョンの基本理念を策定し、2014年には新規事業として太陽光発電など再生可能エネルギーに投資を始めました。こうした背景もあり、長期ビジョンでは全社方針として「環境経営」と「DX」を2つの柱に据えました。

 環境対応では、企業活動に必要な電力を100%再生可能エネルギーとする「RE100」の達成目標を大幅に前倒して、25年に設定しました。

 再生可能エネルギーは太陽光発電と風力発電を中心に事業を進めており、既に2300億円の投資意思決定がなされています。今後は洋上風力にも積極的に取り組む予定です。

 これからは環境貢献度で企業が選ばれる時代です。デジタル化の進展により細やかな顧客対応が可能になるだけでなく、ビジネスの枠組みも変わってくるでしょう。今まで考えてもいなかった業種の人たちとの共創もあり得ると思っています。