聞き手/田中 太郎(日経ESG経営フォーラム事業部部長)

2030年に目指す姿を踏まえて3つの全社戦略を策定した。イノベーションに不可欠な社員の力を伸ばしていく。

2021年度から新中期経営計画が始まりました。全体像とそこに込めた思いについて教えてください。

田中 公章(たなか・きみあき)
日本ゼオン 代表取締役 社長
1953年生まれ。79年東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了、同年日本ゼオン入社。2005年取締役高機能ケミカル事業部長、11年取締役常務執行役員、12年取締役専務執行役員を経て、13年より現職。東京都出身(写真:村田 和聡)

田中 公章 氏(以下、敬称略) 今から3年ほど前に新しい中計について経営層だけでなく若手を入れて議論を始めました。もともとCSR経営に関する勉強会を行ってきたこともあり、「社会の期待に応える」というビジョンはすぐに決まったのですが、重要なのはそれだけではありません。大切なステークホルダーである「社員の意欲に応える」ことも大切だという意見が出て、30年のビジョンは「社会の期待と社員の意欲に応える会社」という言葉にまとまりました。

 その時、「株主は?」という意見も出ました。対して、私はこう答えました。「社員やお客様を大切にしながら、新事業・新技術の開発や社会貢献に力を注いでいけば、最終的に株主に反映されるようになる」

 実はこれは、偶然にも古河財閥の創業者である古河市兵衛の考え方と同じだったんですね。

30年の目標(目指す姿)からバックキャスティングする形で全社戦略がつくられていますね。

田中 そうです。ただし、自然災害や経済危機など予期しないことが起こるので5年先、10年先を予想するのは無理があります。今回の中計から2年で区切り、都度見直し補正していくような形で計画をつくっていくことにしました。新中計の対象は21-22年度となっています。

既存事業を磨きつつ新規開拓

全社戦略は「カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの実現」「既存事業の磨き上げと新規事業の探索」「『舞台』を全員で創る」の3つですね。

田中 最初の2つが「社会の期待に応える」ための取り組みで、3つ目が「社員の意欲に応える」ためのものです。50年のカーボンニュートラルを見据え、日本化学工業協会が出す指針などを踏まえて具体的な目標を今後設定します。

 30年にはSDGs貢献製品の売上高比率を50%にします。21年4月に発表しましたが、理化学研究所、横浜ゴムと共同でバイオマスから自動車タイヤの原料になるブタジエンを効率的に生成する新技術を開発しました。これによりCO2削減に貢献できると考えており、こうした様々な方法でCO2を減らしていきます。

 既存事業を磨き上げるため、ROIC(投下資本利益率)を現在の6%から9%に高めます。エンジン周りに使用される特殊合成ゴム、耐油性に加えて耐熱性や耐摩耗性に優れる「Zetpol」という水素化ニトリルゴムも自動車になくてはならない材料として、まだ伸びていくと思います。