ただ、いつまでも既存事業に頼ってばかりいられないので、新規事業600億円増(19年度比)という次のストーリーがあるわけですね。

田中 そうです。新規事業では医療・ライフサイエンス、自動車のCASE・MaaS、情報通信(5G/6G)、省エネルギーの4分野に力を入れていきたい。例えば、高機能樹脂COP(シクロオレフィンポリマー)を用いた医療用の検査分析部材などにリソースを投入したいと考えています。

社員の力でイノベーション

今回、Well-beingを打ち出し、「社員の意欲に応える」としました。全社戦略の3番目、「『舞台』を全員で創る」についてお聞かせください。

田中 Well-beingというのは健康で良い生き方をするということですが、その一番上を目指したいと思っています。社員の要望のすべてに応えることは難しいものの、会社として選択肢はできるだけ多く用意したいと思っています。「従業員エンゲージメント75%」「外国人/女性役員比率30%」という30年目標を掲げました。

 具体的には時間と場所にとらわれない働き方の実現、福利厚生カフェテリアプランの再整備、キャリアデザインやリカレント教育の充実などの選択肢を増やしていきます。こうしたことが社員のWell-beingにつながっていくのだろうと思います。

■ 個々の強みを発揮できる「舞台」を全員で創る
■ 個々の強みを発揮できる「舞台」を全員で創る
*取締役と監査役で社内外を問わない
(出所:日本ゼオン)

「社員の意欲に応える」ことはイノベーションの誘発に不可欠なことではないでしょうか。

田中 その通りです。私どもの新事業はイノベーションで成り立っています。ブタジエンを抽出するGPB法、イソプレンを抽出するGPI法、溶融押し出し法によりCOPを光学フィルムにする方法など、どれもそうです。

 私は研究所勤務が長く、過去の新事業について振り返ってみても、制度や組織によって新たな技術や事業が生まれたわけではなく、一人ひとりの優れた技術者の存在が大きかったと思います。

 やる気のある人をエンカレッジして、いかにピラミッドの下の部分を広くするか。新中期経営計画を達成するためにはイノベーションが必要であり、それには社員の力が不可欠だと考えています。