ESGへの取り組みが浸透していくことで、新しい提案や商品開発など社内での変化はありましたか。

高原 21年4月に、「顔がみえマスク」を発売しました。初回発売は7時間で3000枚を完売しました。このマスクの開発は聴覚障がいのある女性社員からのメールがきっかけでした。

 彼女が読唇術で会話できるようにと、母親が透明フィルムを縫い付けた口元が見えるマスクを作ってくれたので、会社の人たちに配って着けてもらいたいというのです。その社員とのコミュニケーションがきっかけとなり、トップダウンで商品化を決めました。

 私が意識しているのは、人は心に働きかけなければ動かないということです。これを情動性と言います。

 そういうコミュニケーションを大切にしたいと思っています。

ユニ・チャームの事業はグローバルに拡大し、約80の国と地域で展開しています。

高原 当社は商品の6割以上を海外で販売しており、日本国籍の社員は全体の3割ほどです。私の考えるグローバル企業とは、ユニ・チャームウェイというビジネスモデルを軸にしつつ、経営の主体は現地に委ねて自立性を持たせるスタイルです。環境の変化を迅速に察知することが重要なので、最終的には現地の人にトップを任せたいと思っています。

 最近、社内の「英語を勉強しよう」という風潮が、「デジタルを勉強しよう」に変わってきました。英会話は同時翻訳ツールなどでのサポートが得られる時代になりました。しかし、消費者の心をつかむためには統計手法を理解する必要があります。ユニ・チャームの最終目標は、消費者の価値観をできるだけ科学的に分析することなのです。そこで21年から新入社員を対象に、デジタル教育を導入することにしました。五感の可視化をおむつ開発に活用した担当者に、研修プログラム作りの責任者になってもらいました。

心に響く商品作り

非財務情報を形成するのは人的資本です。ESGへの取り組みには、人的資本の強化が必要ですね。

高原 おっしゃる通りです。「ユニ・チャームの商品は品質も良く、購入する、使用することによって環境問題や社会課題解決に参画することになる」と消費者にお考えいただけるようにするべきでしょう。そのためには心に響く商品を作ることが大切で、そんな商品を手がけていけば社員の満足度も上がります。ある意味、これからいい時代になってくるのではないかと思います。