聞き手/田中 太郎(日経ESG経営フォーラム事業部部長)

四大会計事務所の中でもESGに積極的で、パーパス経営にもいち早く取り組んでいる。会計監査の手法で脱炭素や人的資産など非財務情報を指標化し、企業のESGの取り組みに貢献する。

2020年7月に新設したLTV推進室の役割と、活動内容を教えてください。

瀧澤 徳也(たきざわ・とくや)
EY Japan リージョナル・アカウンツ・リーダー兼 LTV推進室リーダー兼 Asia-Pacificサステナビリティ・リーダー
1987年にEYのメンバーファームでキャリアを開始。93年から94年まで米国ニューヨークに拠点を置き、現地投資銀行の監査に携わる。2007年から12年まで欧州においてJapan Business Services(JBS)を率い、欧州諸国でビジネスを展開する日本企業の成長を支援。その後Japanリージョンのマーケッツ部門をけん引し、30年以上にわたりEYに貢献。公認会計士(写真:大槻 純一)

瀧澤 徳也 氏(以下、敬称略) ESGについて企業や官公庁から非常に多くの問い合わせが来ます。EY Japanの窓口となり、顧客の長期的価値(LTV:Long-term Value)を最大化する組織としてLTV推進室を設け、私が初代の室長に就きました。

 EYは会計監査、税務、コンサルティング、M&Aが本業で、それぞれの観点でESGに取り組んでいます。例えば、炭素税にどう対応するか、カーボン・オフセットでクレジット購入をどう会計処理するかなど、LTV推進室が窓口になって全社横断で顧客の要望に対応します。

具体的にはどのような役割があるのですか。

瀧澤 まず社内外にESGあるいはLTVに関して正しくメッセージを発信するコミュニケーション、そしてESGに関連する基準や社会の枠組みづくりです。加盟する公認会計士協会では、非財務情報の開示基準の策定に関わっています。他にも国内19社が共同で設立した、ESG情報開示研究会に参画しています。

 さらに顧客に対するESG事業です。会計監査、税務、コンサルティング、M&Aの各部門の担当者でタスクフォースをつくり、経営の考えを伝えたり、あの企業がESGに積極的に取り組んでいるとか、こんな要望が増えているなど情報共有や議論をしたりします。こうした情報はLTV推進室に集約され、新たな顧客の獲得も進んでいます。

会計監査の強みを生かす

LTV推進室が窓口となり、企業のESG推進に貢献するのですね。

瀧澤 非財務情報といっても、脱炭素だけに取り組めばいいわけではありません。世界経済フォーラム(WEF)が20年9月に非財務情報開示の提言を出したように、人権問題や働きやすい職場など幅広いテーマがあります。

 ビッグフォーと呼ばれる四大会計事務所の中でも、EYはESGに積極的に取り組み、企業のDNAに組み込まれているともいえます。14年には「Building a better working world」(より良い社会の構築を目指して)をパーパス(理念)に掲げました。