聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

循環型社会に貢献する地球環境事業と、超高齢化社会におけるウェルネス事業の取り組みを強化する。産業ガス、医療、農業・食品など多様な事業を通じて、循環型社会の実現を目指す。

エア・ウォーターは、地球環境とウェルネスの2軸に沿って事業を強化する方針を掲げています。

豊田 喜久夫(とよだ・きくお)
豊田 喜久夫(とよだ・きくお)
エア・ウォーター 最高経営責任者(CEO) 代表取締役会長
1973年大同酸素入社。93年大同ほくさん人事本部人材開発部長、99年執行役員人事部長、2000年エア・ウォーター執行役員コーポレート・ソリューションセンター人事部長。医療事業部福祉・介護部長などを経て12年常務取締役、13年専務取締役。19年より現職(写真:行友 重治)

豊田 コーポレート・スローガンとして、「地球の恵みを、社会の望みに。」を2018年11月に策定し、翌年7月には2050年のサステナブルビジョン「地球、社会との共生により循環型社会を実現する」を定めました。

 100以上に広がった事業について、地域に密着して循環型社会に貢献する「地球環境」と、行政と連携して高齢化社会における健康維持などの社会課題に対応する「ウェルネス」の2軸にベクトルを合わせて再編していこうと考えています。

 地球環境は技術がなければ守れません。北海道では、牛のふん尿由来のバイオガスで水素を製造して、地域で利用する地産地消型水素社会の実現を目指すサプライチェーンの実証事業を進めています。

 21年7月には長野県の安曇野バイオマスエネルギーセンターが本格稼働し、木質バイオマスを燃料とする電気・熱・CO2のトリジェネレーションを実現しました。熱とCO2をトマト栽培に利用することで、農業のコスト削減と持続可能な事業の促進につなげていきます。

社会福祉法人「梓(あずさ)の郷」(長野県松本市)の理事長もされています。

豊田 当社の名誉会長だった青木弘(故人)が、故郷である松本市の知人に誘われて始めたのが介護事業です。私が理事長職を引き受けたのは4年ほど前です。「梓の郷」ではグループホーム、訪問介護など様々なサービスを手がけ、21年3月に小規模多機能居宅介護施設をオープンしました。超高齢化社会、いわゆるウェルネスの時代には不可欠なサービスです。

ウェルネスの分野では、歯髄再生治療のような、かなり専門的な領域にも取り組んでいますね。

豊田 虫歯で神経(歯髄)を失った歯に歯髄を移植して再生できれば、生活の質(QOL)の向上につながります。グループ会社で歯髄関連事業を企画・推進するアエラスバイオ社が「RD歯科クリニック」と提携し、20年6月から歯髄幹細胞を用いた再生医療を開始しました。同9月には歯髄幹細胞を長期冷凍保存する「歯髄幹細胞バンク事業」を立ち上げました。

 当社がウェルネスに参入したのは、青木が「これからは暮らしに関わる事業をやろう」と言ったのが始まりです。私たちは衣食住ならぬ「医食住」(医:ウェルネス、食:農業、住:生活を豊かにするもの)を教え込まれたものです。