聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

中期経営計画(中計ストレッチ)で高機能製品事業の拡大、経営基盤の強化を重要施策に設定した。「やり抜く」企業風土を定着させ、電気自動車の主要部材の生産能力を拡大する。

コーポレート・スローガンとして「ナケレバ、ツクレバ」を掲げています。その思いを聞かせてください。

小林 豊(こばやし・ゆたか)
クレハ 代表取締役社長
1974年慶応義塾大学商学部卒業後、呉羽化学工業(現クレハ)入社。2000年クレハ・ケミカルズ(シンガポール)取締役社長、07年常務執行役員 化学品事業部長、09年取締役常務執行役員 新事業推進本部長、12年4月代表取締役副社長、同年9月より現職(写真:大槻 純一)

小林 クレハは2021年、創立77年を迎えました。その歴史を振り返ると、自社開発技術にこだわったものづくりを続けてきたと言えます。

 例えば、家庭用食品フィルム「クレラップ」は、塩化ビニリデンという素材で作られています。かつて、その製造技術で先行する米国の化学メーカーが日本での提携先を探していた際、当社も手を挙げたのですが、パートナーとして選ばれませんでした。それならば「自分たちで作ろう!」と技術陣が奮起し、自社技術による商品化に成功しました。

 自社開発技術へのこだわりの根底にあるのは、「技術立社企業」として社会に役立ちたいとの思いです。

 最近は世の中の変化が早く、技術水準も高くなりました。基本は自社開発としながらも、オープンイノベーションや他社ライセンスの導入なども考えていかなければなりません。現在、米英のスタートアップ2社に出資し、大学や産業技術総合研究所との共同研究も行っています。

21年5月に中期経営計画「Kureha’s Challenge 2022」を発表しました。

小林 社会に貢献し続ける高付加価値型企業を目指して、18年から「Kureha’s Challenge 2020」に取り組んできました。しかし、コロナ禍で国内外の経済が下振れし、シェールオイルや自動車分野で達成できていない目標もあります。

 中計を2年間延長し、未達成課題を完遂する具体的目標とアクションプランを設定した中計ストレッチを策定しました。クレハにとって重要なのは、企業風土として「やり抜く姿勢」を定着させることです。

 重点施策の1つとして、高機能製品事業を拡大するため、中国におけるポリフッ化ビニリデン(PVDF)の生産能力を増強します。PVDFは電気自動車のリチウムイオン電池の正極材用バインダーとして使用されており、需要が急速に拡大しています。正極材用バインダーの世界シェア40%を有する当社の年間生産能力は、現在の1.1万tから24年度には2.1万tに拡大します。

 経営基盤の強化策としては、21年10月に新人事制度を、22年3月から段階的に65歳の完全定年制に移行します。