聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)
米IFFは米デュポンのニュートリション&バイオサイエンス事業部と経営統合し、食品素材の世界最大手となった。代表を務める日本と韓国では、シニア市場をにらんだ製品開発に注力する。
米IFF(インターナショナル・フレーバー・アンド・フレグランス)およびIFFグループの事業概要を教えてください。

1994年ハーキュリーズジャパン、2009年CPケルコジャパン ゼネラルマネージャー。11年ダニスコジャパン(IFFグループ)セールスディレクター、20年ダニスコジャパン代表取締役社長、21年よりIFF Nourish北アジア リーダー(写真:村田 和聡)
塚越 伸朗 氏(以下、敬称略) 2021年2月、米国を拠点とするIFFは、米デュポンのニュートリション&バイオサイエンス部門と統合し、食品素材の世界最大手となりました。事業体は食品、フレグランス、医薬、健康素材の4部門で構成されています。
健康志向の高まりで注目されている大豆たんぱく素材は、世界有数のシェアを占めています。食物繊維も同様で、乳酸菌などのプロバイオティクスのサプリメントでは、ほぼ3割で当社の素材が使われています。
IFFグループは、北アジア(日本・韓国)を統括しています。日本では大豆たんぱくや食物繊維、乳酸菌、キシリトールといった健康素材のほか、乳飲料の乳たんぱく凝集を防ぐペクチン、油と水の分離を防ぐ乳化剤など、食品を安定させる素材を食品メーカーに提供しています。
企業経営の中で、ESGやSDGsをどのように位置付けていますか。
塚越 つくる責任、つかう責任を担う立場として、気候変動対策にはかなり以前から取り組んでいます。IFFは世界47カ国240カ所に製造拠点がありますので、全体で見ると大きなインパクトになります。
メキシコにあるペクチンの粉末製造工場では、製造工程で使う燃料を重油から天然ガスに替え、CO2排出量を年間25%削減しました。これは乗用車7000台分の排出量に相当します。
ペクチン粉末はかんきつ類を加水分解して作ります。同工場では、果皮の残さを家畜飼料にするなど、資源として徹底的に再利用しています。
アイスクリームなどに甘い香りをつけるバニラビーンズは、主にマダガスカルで生産されています。ここでは女性が20%を占める400人以上の生産者と共に組合を立ち上げました。
IFFはその組合を通して、土壌改良や生産性向上による持続可能な栽培、教育面などで様々なサポートをしています。
こうした取り組みが評価され、20年にはフランスのエコバディスによるサステナビリティ調査で最高位のプラチナ認証を獲得しました。

(出所:IFFグループ)

